農本主義の理論家。本名善次郎。慶応(けいおう)4年2月28日生まれ。久留米(くるめ)藩主の侍講であった父から、家伝の制度典例学を学び、二松学舎(にしょうがくしゃ)中退後、中国、朝鮮などを視察し、独学で独特の学識を蓄積した。1902年(明治35)上京、黒竜会(こくりゅうかい)に関係し、韓国併合や日満蒙(もう)を結ぶ「東亜連邦」を構想。内田良平(うちだりょうへい)らと『東亜月報』を発刊。1918年(大正7)老壮会に参加、1920年6月自治学会を創立、人民の自然的自治のうえに政治が施行される農本自治主義こそ日本本来の姿であると説いた。『自治民範』(1927・平凡社)などの著書がある。1932年(昭和7)血盟団事件に連座して逮捕されたが、不起訴。昭和12年7月9日死去。
[大野達三 2016年8月19日]
『滝沢誠著『権藤成卿』(1971・紀伊國屋書店)』▽『高橋正衛解説『現代史資料23 国家主義運動3』(1974/オンデマンド版・2004・みすず書房)』▽『木下半治著『日本右翼の研究』(1977・現代評論社)』
農本主義思想家。久留米生れ。本名善太郎,間々道人,間々子と号す。父松門は郷士,国学者として知られる。青年時代,数回にわたり朝鮮,中国,ロシアを視察し,1902年内田良平の黒竜会に入り,対露開戦,日韓合邦を主張し,また黄興,宗教仁らと交遊し,08年《東亜月報》を発行。09年《皇民自治本義》を著し,〈社稷(しやしよく)国家〉の実現と農民自治を説く。官治主義,資本主義,都会を排撃し,アジア固有の〈原始自治〉に回帰することを訴え,昭和期の農本主義思想家として大きな影響力をもった。27年安岡正篤らの金鶏学院で講義し,また《自治民範》(1927),《農村自救論》(1932)は,血盟団事件,五・一五事件の思想的背景をなすものとして,嫌疑を受け捕らえられた。農本結社として,31年日本村治派同盟,32年自治農民協議会に参加し,昭和恐慌下の農村救済請願運動の中心人物の一人になっていった。
執筆者:森 武麿
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明治〜昭和期の農本主義思想家,制度学者
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…この議会に向けて各種農民団体の請願が続き,借金の棒引き,軽減または償還延期,農産物価格引上げ,国家による損失補償,肥料資金の国家補償,税金の軽減などが全国に宣伝された。とくに長野,山梨,群馬など養蚕県では長野朗,権藤成卿,橘孝三郎ら農本主義者による自治農民協議会が結成され,全国から約5万人の署名を集め,第62議会に向けて農村救済請願運動が展開された。この結果,つづいて救農議会が開かれ,米穀法改正などによる米価対策,産業組合中央金庫特別融通及損失補償法,不動産融資及損失補償法,金銭債務臨時調停法などによる負債対策,さらに土木事業により景気回復と窮乏農民に副業収入を与えるための大規模な救農土木事業(または時局匡救事業)が可決実施された。…
…〈農業は尊いものである,偉大なものであると云ふ考えを起すやうにしてやつたならば始めて小作人が逃げて行かぬやうになる〉(横井《農事振興集》)というように地主制の安定化を図ろうとした。(3)権藤成卿,橘孝三郎のような在野の右翼運動家の主張する小生産者―中農層の危機に対応した超国家主義的農本主義。〈是の不安危惧の深きは農村である。…
…会としての一定の主義・方針はなく,内外の諸問題について意見を交換し研究することを目的としていた。満川や大川周明をはじめとする後年の国家主義運動の指導者ばかりでなく,堺利彦,高尾平兵衛などの社会主義者,高畠素之などの国家社会主義者や,大井憲太郎,嶋中雄三,下中弥三郎,権藤成卿,中野正剛など多彩な人々が参加したことに特色があった。満川が猶存社の活動に力を入れるにしたがって老壮会の活動はしだいに衰えたが,22年まで44回の会合を開き,500名をこえる参加者があったといわれる。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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