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農本主義 のうほんしゅぎ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

農本主義
のうほんしゅぎ

農業生産と農村共同体こそが国家と民衆存立の基礎であるとの主張をいう。明治以降,小農業生産の危機と農村共同体の解体が進行するにつれて,農本主義の主張は強まってきた。とりわけ昭和初年の農業恐慌による中小農民の没落は,日本村治派同盟の結成 (1931) をはじめ,権藤成卿橘孝三郎ら農本主義者の急進的活動を促した。農本主義者の思想にはさまざまな系譜があるが,その共通性は反資本主義と村落共同体的志向にある。だが農本主義は革新思想にはならず,国民共同体的志向の点から右翼思想につながり,社会主義思想と対立しつつ日本ファシズムの精神的支柱の一つとなった。

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百科事典マイペディアの解説

農本主義【のうほんしゅぎ】

農業および農村社会を国の本とする考え方。商品経済が浸透した封建末期や帝国主義段階の後進資本主義国で農業の危機に際して唱えられた。特に日本やドイツでは軍国主義ファシズムと結び,富国強兵の基調となった。
→関連項目愛郷塾

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世界大百科事典 第2版の解説

のうほんしゅぎ【農本主義】

立国の基礎を農業におくことを主張する思想と運動。本来,農本思想は農業生産が基本であった封建社会の支配的イデオロギーとして存在するものである。農本主義が特有のイデオロギーとして成立するのは封建社会末期の商業資本,小商品経済の成長により体制そのものが動揺しはじめる時点である。中国には古くから〈農〉を重んずる思想はあったが,日本では〈本を重んじ末を押ると言ふこと是古聖人の法也。本とは農也,末とは工商也〉(《政談》)という荻生徂徠に始まり,山片蟠桃安藤昌益二宮尊徳らがそれを担った。

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大辞林 第三版の解説

のうほんしゅぎ【農本主義】

農業をもって立国の基本であるとする考え方。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

農本主義
のうほんしゅぎ

農業こそが社会、あるいは国の本であるという思想、およびこの農本思想に基づく政治上の主義、主張。元来は、封建社会の矛盾を反映して出現したもので、領主の苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)や、天災地変による飢饉(ききん)の惨状などの見聞を動機として考え出されたものが多い。江戸時代の思想家安藤昌益(しょうえき)、佐藤信淵(のぶひろ)、二宮尊徳などの思想や主張は、農民の窮乏をどう救済するかという発想から発展したものである。
 明治維新以後、天皇制政府は、農業と農村を重視するかのような農本主義的思想をしばしば振りまいたが、寄生地主制など農村の封建的要素を取り除かず、これを天皇制の一つの経済的基礎として資本主義を発展させた。この半封建的土地所有制下の農村は、低賃金労働者と兵士の豊かな供給源となり、農民は収奪に苦しみ窮乏を続けた。とくに1927年(昭和2)から繰り返された大恐慌は、農村に壊滅的打撃を与え、なかでも東北、北海道などの寒冷地帯では、飢え死に、凍死、自殺、一家心中などの地獄絵が現出した。
 こうした状況も反映して、昭和初期には、いわゆる昭和維新、国家改造運動と結び付いた農本主義が現れた。権藤成卿(ごんどうせいけい)、橘孝三郎(たちばなこうざぶろう)によって唱えられた農本自治主義である。権藤が1932年の血盟団事件に連座し、橘が同年の五・一五事件に7名の「農民決死隊」を率いて参加、無期懲役の刑に処せられたことから農本自治主義は一躍注目を浴びた。現代史のうえで農本主義とは、この農本自治主義をさすことが多い。農本自治主義は、権藤成卿の『自治民範』『農村自救論』、橘孝三郎の『日本愛国革新本義』『皇道国家農本建国論』などの著書のなかで展開されている。権藤のそれは、彼の「制度学」と結び付いた特異なもので、大化改新によって実現したとする「公民自制自治」を理想とし、資本主義の中央集権を排し、政治組織は農村を中心とする自治制にすることを主張している。国家主義を論難し、「我日本を賊する匪類(ひるい)、同胞庶民の仇敵(きゅうてき)」とまでいっている。橘のそれは、農村自治を主張する点では同じであるが、権藤ほど復古的、反資本主義的ではなく、また、ある程度機械工業や経済を統制する国家権力の存在を認めている。昭和初期の農村の危機、農民の極度の貧窮化の状況のもとで、農村自治主義が一定の影響を与えたことは否めない。ただ、これを日本ファシズム運動の支柱とまで評価する説もあるが、国家改造運動の主流をなした北一輝(きたいっき)、大川周明(しゅうめい)その他の思想には農本自治主義がまったくみられないことや、右翼運動の実態を事実に即してみれば、そのような評価は認めがたい。[大野達三]
『山本彦助「国家主義団体の理論と政策」(『思想研究資料特輯』第84号所収・1941・司法省刑事局) ▽木下半治著『日本右翼の研究』(1977・現代評論社)』

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