古生物学者、地質学者。日本の古生物学の基礎を築く。万延(まんえん)元年長崎に生まれる。1878年(明治11)東京大学予備門(後の第一高等学校)を第1回生として卒業、1882年、紀伊半島南西部の調査研究を卒業論文として東京大学地質学科を卒業した。ただちに地質調査所に入り、ナウマンを助けて地質調査事業の基礎をつくった。1886~1889年ドイツのミュンヘン大学に留学し、古生物学を学ぶ。帰国して帝国大学理科大学教授となり、古生物学を講義した。初め、白亜紀、ジュラ紀の動物化石、植物化石の研究を行ったが、のちに日本の第三紀の貝化石について研究し網羅的記載を行って、学問的に大きな遺産を残した。『前世界史』などの著述によって地質学の日本への導入に努めた。丹那(たんな)トンネルの工事開始(1918)の初期には、調査にも参画している。
[木村敏雄]
地質学者。日本の古生物学の基礎を築いた。長崎に生まれ,1882年東京大学を卒業。地質調査所に入り,86年ドイツに留学し,ミュンヘン大学でチッテルKarl Alfred von Zittel(1839-1904)のもとで古生物学を学び,89年帰国,東京大学教授となる。留学中に研究した北陸地方の中生代植物化石の論文は,日本人として最初の化石記載論文である。以後,古生物学教授として多くの後進を育て,自身も新生代貝化石を中心に多種の化石の研究を発表している。分類学のほか,化石層序,古気候も論じた。《化石学教科書》(1895-98。後に《古生物学》と改題),《前世界史》(1918)などの著作は長く教科書として用いられた。古生物学の術語の日本語訳にも努め,放散虫,紡錘虫,甲冑魚(かつちゆうぎよ),魚竜,翼手竜,始祖鳥,恐竜,剣竜,菊石,貨幣石,封印木,鱗木(りんぼく),蘆木(ろぼく)など多くのものが今も用いられている。
執筆者:清水 大吉郎
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明治〜昭和期の地質学者
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…現生のタチシノブの外形によく似たシダ化石。1889年横山又次郎の命名。ジュラ紀中期から白亜紀前期にかけて生育し,日本でもジュラ紀後期~白亜紀前期の手取植物群,領石植物群から豊富に知られている。…
…この場合の過去とは地質学的意味での過去であり,その生物が,現在は化石となっている程度の昔である。日本の古生物学の基礎を築いた横山又次郎はその著《古生物学綱要》(1920)において,前世界という過去の地質時代に地球上に生息した生物,というように表現している。いずれにせよ,化石が具体的なものとして存在しているのに対して,古生物の方はすべての種類が化石として残存しているわけでもなく,また現生生物と同じ生活体として扱うには探究不可能な点が多いので,抽象的な一般的概念となっている。…
※「横山又次郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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