家庭医学館 「機能性出血」の解説
きのうせいしきゅうしゅっけつ【機能性出血 Functional Uterine Bleeding】
月経(げっけい)は、卵巣(らんそう)から分泌(ぶんぴつ)される卵胞(らんぽう)ホルモンと黄体(おうたい)ホルモンとが、周期的にバランスよく変動することによっておこります。
機能性子宮出血は、これらのホルモンのバランスが、なんらかの原因でくずれることによっておこります。
つまり、卵巣機能が十分にはたらかないことによっておこる、不正性器出血と考えていいでしょう。
とくに、排卵(はいらん)がない場合は、黄体ホルモンが分泌されず、機能性子宮出血をおこしやすい状態となります。
ですから、卵巣機能が不安定で、排卵障害をきたしやすい思春期や更年期(こうねんき)に多くおこり、逆に、卵巣機能が比較的安定している性成熟期には少なくなります。
出血の量や持続期間には、決まったパターンはありません。1日で止血するものから、1か月以上持続するものまでさまざまです。
もちろん、長期間多量に出血すれば、貧血となります。
[原因]
卵巣から分泌されるホルモンのバランスの異常をきたす原因としては、思春期や更年期のような年齢的なもののほかに、精神的なストレス、環境の変化、過度の運動、特殊な薬物の使用(ホルモン剤、精神安定剤、麻薬など)、摂食異常(過度のダイエット、過食)、内科的疾患(甲状腺(こうじょうせん)疾患、糖尿病など)にともなうものなど、多岐(たき)にわたっています。
[検査と診断]
まず、器質的疾患の有無を確認するために、内診、妊娠反応、超音波検査、帯下(たいげ)(おりもの)培養(ばいよう)、細胞診、組織検査を行ないます。
これらがすべて異常なければ、機能性子宮出血と診断します。
つぎに基礎体温や血中ホルモンの測定を行ない、治療方針が決まります。
[治療]
年齢や排卵の有無によって、治療方針が異なります。
●若年期
多くが無排卵性の出血です。漢方薬を長期間服用したり、ホルモン剤で月経のような出血を周期的におこし、卵巣機能の成熟を待ちます。
それでも多量に出血をくり返す場合には、若い人であっても、排卵誘発剤(はいらんゆうはつざい)(「排卵誘発剤の知識」)を使用することもあります。
●性成熟期
この時期の機能性子宮出血には、排卵性と無排卵性の両方があります。
排卵性の場合は、卵巣から卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌はあるものの、分泌量がいくぶん少ないためにおこります。
ですから、ホルモン剤を少量補充すると、出血は止まります。
また、排卵性の出血でも、いわゆる中間期出血と呼ばれる、排卵期におこる少量の出血は、病的なものではないと考えられており、ほとんど治療の必要はありません。
無排卵性の場合は、排卵誘発剤を使用します。
●更年期以後
この年代では、子宮頸(しきゅうけい)がん(「子宮頸がん」)や子宮体(しきゅうたい)がん(「子宮体がん」)のような悪性疾患が発症しやすいので、細胞診や組織診を行ない、必ずこれらの可能性の有無を確認することがたいせつです。
悪性疾患でないことがわかったら、ホルモン剤を使って出血を止めます。
機能性子宮出血の多くは、無排卵性の出血ですが、止血後、排卵誘発剤を使用することは、通常ありません。