改訂新版 世界大百科事典 「次亜臭素酸」の意味・わかりやすい解説
次亜臭素酸 (じあしゅうそさん)
hypobromous acid
化学式HBrO。水溶液としてのみ存在しうる弱酸で,生成する最高濃度は0.3mol/l程度。黄色で特有の臭気がある。臭素水中にも微量に存在する。
Br2+H2O⇄HBrO+HBr
硝酸銀水溶液に臭素水を滴下し,生ずる臭化銀をろ過し,窒素を通じて過剰の臭素を除去したのち,低温で減圧蒸溜すると得られる。つねに少量の臭素酸HBrO3を含んでおり,純粋な次亜臭素酸溶液は得られない。沸点は50mmHgで40℃,11~12mmHgで20~25℃。次亜塩素酸よりも弱く,次亜ヨウ素酸よりは強い酸で,電離定数Ka=2.06×10⁻9(25℃)。光で分解して酸素を発生し,また暗所でも臭素と臭素酸に分解する。
この分解反応はニッケル,コバルト,銅塩,活性炭などにより促進される。強い酸化性があり,臭化水素,臭化物,ヨウ化水素,ヨウ化物を酸化するほか,過酸化水素,硫化水素,亜硫酸などをそれぞれ酸素,硫黄,硫酸にまで酸化する。また有機化合物に対して次亜塩素酸と同様に臭素化作用があるほか,二重結合に対する付加作用がある。
次亜臭素酸塩hypobromiteは次亜塩素酸塩によく似ているが,固体としては取り出されていない。淡黄色水溶液としてカリウム塩,ナトリウム塩が得られている。次亜塩素酸塩より分解しやすく,強酸化剤,臭素化剤として用いられる。
執筆者:大瀧 仁志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報