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ドイツ語のアウフヘーベンaufhebenの訳語で、ヘーゲルが哲学用語とした。「揚棄(ようき)」とも訳す。否定、保存、高揚という三義を含む。たとえば青年マルクスは「神の〈止揚〉としての無神論は理論的な人間主義の生成である」というが、ここでは、神を「否定」する、神という形式における人間の本質を「保存」する、神中心主義という人間性の否定を、人間中心主義に「高揚」するの意である。これはまた人間の本質(神)と現実存在とを「統一」することにもなる。「肯定」と「否定」を「限定」へ、「ポロス(豊富)」と「ペニア(欠乏)」を「エロス(愛)」へ止揚し、統一するとき、肯定と否定、「ポロス」と「ペニア」という初めの対立項は、「限定」や「エロス」といった、より高次の総合概念の「契機」となる。個人は国家の契機であり、国家はより普遍的で、かつより具体的なもの、具体的普遍である。直接的、抽象的なものが具体的普遍に「止揚」される。
[加藤尚武]
『ヘーゲル著、寺沢恒信訳『大論理学』(1977・以文社)』▽『ヘーゲル著、松村一人訳『小論理学』全2冊(岩波文庫)』
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…彼は,ここに,矛盾律を絶対化する悟性論理(形式論理)を退け,矛盾律(および同一律や排中律)をも相対化する理性論理としての弁証法を宣揚することになった。真に学理的な方法としての弁証法とは,〈自己自身を吟味し,自己自身で自己の限界を規定しつつ,内在的に自己止揚していく思惟の運動〉である。ここに,そのつどの仮設的措定命題を順次に吟味・弁駁(べんばく)していく対話術的手法,プラトンにおける弁証法の含意が回復されていることに注意されたい。…
※「止揚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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