歪む(読み)イガム

デジタル大辞泉 「歪む」の意味・読み・例文・類語

いが・む【×歪む】

[動マ五(四)]《「ゆがむ」の音変化》
ゆがむ1」に同じ。
「針ガ―・ンダ」〈和英語林集成
ゆがむ2」に同じ。
「気ノ―・ンダ人」〈和英語林集成
盗む。
「是まで人の物を―・み候へば、どうで地獄へまかり申すべく候」〈浄・朝顔話
[動マ下二]いがめる」の文語形

ひず・む〔ひづむ〕【×歪む】

[動マ五(四)]
ゆがんだ形になる。いびつになる。ゆがむ。「顔の表情が―・む」
テレビ・オーディオなどでひず3が生じる。「スピーカー高音部が―・む」
[動マ下二]
かがめる。曲げる。
「身を―・めて」〈浮・男色十寸鏡〉
苦しめる。責める。
「秦を攻め―・むるぞ」〈史記抄・張儀伝〉
[類語]ゆがむ曲がる

ゆが・む【×歪む】

[動マ五(四)]
物の形が、ねじれたりたわんだりして正しくなくなる。ひずむ。「障子が―・む」「痛みに顔が―・む」
心や行いなどが正しくなくなる。「―・んだ根性
言葉がなまる。
「声など、ほとほとうち―・みぬべく」〈東屋
[動マ下二]ゆがめる」の文語形
[類語]ひずむ曲がる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「歪む」の意味・読み・例文・類語

いが・む【歪】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙 ( 「ゆがむ(歪)」の変化した語 )
    1. 正常な形がくずれて曲がったり、正常な位置、状態から傾いたりする。
      1. [初出の実例]「石の広ていがうだやうな石ぞ」(出典:土井本周易抄(1477)五)
      2. 「兎角、荷鞍がいがんであぶない」(出典:滑稽本・客者評判記(1811)上)
    2. 行ないや心が正しくなくなる。邪悪になる。ひねくれる。
      1. [初出の実例]「温公(おんこう)も六悔(りっくい)有。ましてや愚蒙の我らなど、くゆる事やめがたしといがむ」(出典:仮名草子・悔草(1647)下)
    3. 病気になる、わずらうことをいう、大工、寄席芸人の間の隠語
      1. [初出の実例]「わずろうを、いがむ」(出典:新ぱん普請方おどけ替詞(1818‐30頃か))
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行四段活用 〙 盗む。いがめる。
    1. [初出の実例]「其いがんで戻った金を、又おれが方へいがめて」(出典:歌舞伎・傾城青陽𪆐(1794)五)
  3. [ 3 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙いがめる(歪)

歪むの語誌

室町時代の抄物あたりから見えはじめるが、当時の辞書などにはこの語形は見いだしにくく、口語的な場で使われていたものと思われる。


ゆが・む【歪】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行五(四) 〙
    1. 整った形がねじれ曲がる。まっすぐでなくなる。曲がる。よじれる。ひずむ。いがむ。
      1. [初出の実例]「是に即坐(ゐながら)沙彌の口喎斜(ユガミ)て、薬もて治療せしむるに、終に直ら不。〈興福寺本訓釈 喎斜 二合由加三天〉」(出典:日本霊異記(810‐824)上)
    2. 心や行ないなどが正しくなくなる。公平でない。よこしまになる。
      1. [初出の実例]「事違ひて心うごき、かならずその報い見え、ゆがめる事なん、いにしへだに多かりける」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
    3. 本来の姿、望ましい方向からそれる。はずれる。
      1. [初出の実例]「琵琶もなほせと、上ののたまはせつれど、中々ゆがみぬべく侍りけるとのたまひければ」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)三)
    4. 言葉がなまる。
      1. [初出の実例]「若うより、さる東方の、遙なる世界に埋もれて、年経ければにや、声など、ほとほとうちゆがみぬべく」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙ゆがめる(歪)

ひず・むひづむ【歪】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 マ行四段活用 〙
    1. 形がゆがむ。いびつになる。ねじれる。
      1. [初出の実例]「ゆかめる物をひつむといへる如何 はし、つる、めるの反、はり、つる、めりの反」(出典:名語記(1275)八)
      2. 「御持鎗さや蝙蝠の打落す〈忠清〉 花の嵐にひづむ仮小屋〈光延〉」(出典:俳諧・江鮭子(1690))
    2. 茶器などの形がゆがんで、正統な、あるいは規格的な形とは別の新しいおもしろさとなる。
      1. [初出の実例]「うす茶の時は、せと茶椀、ひつみ候也、へうけもの也」(出典:宗湛日記‐慶長四年(1599)二月二八日)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙ひずめる(歪)

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