歯固め(読み)はがため

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

一般には元日の根を固めて一年中健康であることを祈念して固い食物を食べる行事。くり,かや大根串柿かぶするめ昆布など,地方によってさまざまであるが,平安時代から「歯固めの」として,長寿を祝って大根,獣肉などを口にしてきた。全国的にみても大根だけは共通して用いられている。東日本では6月1日にも,正月を干して保存しておいたものを歯固め餅として食べる地方がある。これを食べれば歯がじょうぶになり,すなわち健康になるという。佐渡では赤児の 100日目の食初の祝いを歯固めと呼んでいる。

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百科事典マイペディアの解説

年の初めに歯を固めると称して鏡餅(もち)や押アユ,イノシシの肉などを食べる風習。歯は(よわい)の味で,歯固めには長寿を祝うの意も含まれている。年神に供えた鏡餅をそのまま歯固めと呼ぶところがあり,これを夏季まで保存し,6月1日に食べるところもある。

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世界大百科事典 第2版の解説

正月初めに堅いものを食べて歯をじょうぶにし,長寿を願うこと。歯固めの歯は元来〈齢(よわい)〉のことで,齢を固めて新たに生まれ変わるところにこの風習の意味があった。古く,中国の《荆楚歳時記》には,年頭に膠牙餳(こうがとう)という堅いあめを食べる風習が記されている。日本にも古くこの風が伝わり,歯固めの具としてさまざまなものが用いられた。たとえば,平安時代の貴族社会では押鮎,鹿肉,大根などが用いられ,のちに鏡餅(古くは餅鏡(もちいかがみ)といった)も歯固めの具とされるようになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

正月と6月に長寿を願って行われる行事。宮中では平安時代以来、元旦(がんたん)より3日まで天皇に大根、瓜(うり)、押鮎(おしあゆ)などの歯固めの膳(ぜん)が差し出された。『源氏物語』や『枕草子(まくらのそうし)』にもこのことは記されている。民間における習俗としては、長野県の上(かみ)、下伊那(しもいな)郡では、元旦に串柿(くしがき)、搗栗(つきぐり)、豆などを茶うけとして家族一同で茶を飲むことを歯固めといっている。中国地方の広島県や鳥取県などでも、正月に搗栗や飴(あめ)を歯固めといって食べる。6月1日の歯固めも全国各地にみられる。すでに江戸末期の『諸国風俗問状答(といじょうこたえ)』にある伊勢(いせ)国白子(しろこ)領の答書によると、正月の鏡餅(かがみもち)をしまっておいて食べるとある。現在でも青森県上北(かみきた)郡東北(とうほく)町小川原(おがわら)地区では、6月1日歯固めの日に、正月神前に供えた鏡餅をこの朝食べて歯固めをする。焼かずにそのまま食べるが、焼いて食べる者もかなりあるという。宮城県牡鹿(おしか)郡では、正月餅を一臼(うす)そのまま保存しておき6月1日の歯固めの日に焼いて食べるという。

[大藤時彦]

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世界大百科事典内の歯固めの言及

【氷の朔日】より

…民間でもこの日を〈氷の朔日〉といい,正月の餅を氷餅にして保存し,この日に食べる習俗がある。〈歯固め〉などと呼び,歯が丈夫になるという。また,この日をムケノツイタチと呼び,蛇が桑の木の下で脱皮するので桑畑に入るのを忌むという地方も多い。…

【正月】より

…歳神には鏡餅を供える。平安時代,宮中では,譲葉(ゆずりは),大根,押鮎(おしあゆ),橘(たちばな)をのせて鏡餅を供えたが,天皇には〈歯固め〉といって,三が日の朝,鏡餅,大根,魚,鹿や猪の肉(代用は雉(きじ)の肉)などを盛った膳を供えた。天皇は見るだけであったのは神供の形式であろう。…

※「歯固め」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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