〈歳事記〉とも書く。元来は年中の行事や故実などを記したものをいうが,普通は俳句の季語を集めて句作の参考に供するもので,季語を季別,時候,天文,人事,宗教,動植物等の部門別に分類して解説を加え,例句を付してあるものを指す。より小型,簡略なものを季寄(きよせ)といっている。もとは連歌,俳諧の式目書,作法書の中に四季の詞として季語が収録されていたもので,連歌では《至宝抄》《無言抄》等,俳諧では《はなひ草》《誹諧初学抄》《俳諧番匠童(ばんじようわらわ)》《をだまき綱目》《俳諧通俗志》《手挑灯(てちようちん)》等,多数刊行されている。1648年(慶安1)刊の《山之井》は初めての独立した季寄の書で,随筆風の解説と例句をそなえており,続く1663年(寛文3)刊の《増(ぞう)山の井》はのちのちまで用いられた。《滑稽雑談(ぞうだん)》は収録語数も多く,考証もきわめて詳密である。1753年(宝暦3)刊の千梅著《篗纑輪(わくかせわ)》は難解な季語に考証を加えているが,それに対して論難の書が出たこともあって,考証もいちだんと細かくなった。1783年(天明3)刊の麁文(そぶん)の《華実年浪草(かじつとしなみぐさ)》は,季語2760余をあげ,諸書を引用して解説しており,のちに大きな影響を与えた。1803年(享和3)の曲亭馬琴の《俳諧歳時記》,同書を青藍が増補した《増補俳諧歳時記栞草(しおりぐさ)》は,江戸中心に記述されている点に特色があり,ながく用いられた。1808年(文化5)刊の洞斎の《改正月令博物筌(はくぶつせん)》は,漢詩,和歌,連歌等からも用例を示して特色のあるものになっている。明治以後は太陽暦の施行や社会的文化的な生活の変動にともない,歳時記の内容も大きな変遷を経た。多くの歳時記の中で,第2次大戦前では改造社版《俳諧歳時記》,戦後では角川書店版《図説俳句大歳時記》が史的展望もそなえて詳しいが,一方,実作向きの解説をそなえた諸家の歳時記が写真入りや季節別の小型本として刊行されている。
執筆者:石川 八朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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