日本大百科全書(ニッポニカ) 「毒鉄鉱」の意味・わかりやすい解説
毒鉄鉱
どくてっこう
pharmacosiderite
カリウムを含む含水正ヒ酸第二鉄の鉱物。硫砒(ひ)鉄鉱あるいは砒鉄鉱起源の二次鉱物として、これらを含む熱水鉱脈鉱床や接触交代鉱床(スカルン型鉱床)中に産するほか、温泉沈殿物としても知られている。前者の例は大分県佐伯(さいき)市木浦(きうら)鉱山(閉山)、岐阜県中津川(なかつがわ)市恵比寿(えびす)鉱山(閉山)など、後者の例は島根県池田温泉に知られる。自形は立方体、あるいはこれを基調とする立体。沈殿物の場合は土状。数ある毒鉄鉱のうち、一部の毒鉄鉱の水分は出入自由である。水分は、沸石水(脱水、吸湿を繰り返す)のため一定ではない。産地によって水の抜けやすいものと抜けにくいものがあり、幅がある形で与えられる。水分の増減は基本的な結晶構造に変化を及ぼさない。英名はギリシア語で毒と鉄を意味する語の合成語である。
[加藤 昭]