民法典論争(読み)みんぽうてんろんそう

百科事典マイペディア 「民法典論争」の意味・わかりやすい解説

民法典論争【みんぽうてんろんそう】

旧民法施行をめぐる論争。1890年に公布された旧民法は,1893年1月から実施されることになっていた。1889年東京大学法学士会の,民法天賦人権論に基づき社会人倫を破壊するものとの反対意見発表から実施延期・断行の論争が起こった。同時に商法典論争も行われ,論争は自由主義国家主義の思想対立に発し,フランス法学派とイギリス法学派の抗争もからんで紛糾。1892年の第3議会商法・民法施行延期法案が通り,1896年まで延期となった。
→関連項目富井政章ボアソナード法典論争

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「民法典論争」の意味・わかりやすい解説

民法典論争
みんぽうてんろんそう

1890年頃日本において民法典施行の是非をめぐって行われた論争。条約改正促進のために近代的法典の整備を迫られていた明治政府は,90年フランス人 G.ボアソナードを中心に完成した民法典 (→旧民法 ) を公布し,93年から施行することを定めた。これに対し,一部の法律学者や帝国議会議員などの間から強力な反対論 (施行延期論) が出され,施行断行を主張する断行派 (→梅謙次郎 ) との間に激しい論争が繰広げられた。穂積八束は「民法出デテ忠孝亡ブ」と論じ,論争は延期派の勝利に終り,92年の帝国議会は,施行を延期することを可決した。これを受けて日本人起草委員のみによってこれに代る民法典 (→民法 ) の編纂事業が行われるにいたった。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「民法典論争」の解説

民法典論争
みんぽうてんろんそう

明治中期の民法の制定過程で,その是非をめぐっておこった論争。政府はボアソナードを中心にフランス民法をモデルとした民法の起草を進め,1890年(明治23)財産編・相続編・人事編などを公布。93年1月1日からの施行が予定されていたが,公布前から帝国大学系のイギリス法学者の間に民法延期論がおこり,1891年にはドイツ法の権威穂積八束(やつか)が,「民法出テゝ忠孝亡フ」の論文で,日本の伝統的家族道徳が破壊されるとして民法の施行延期を唱えた。一方,梅謙次郎帝国大学教授が民法施行論を主張。92年第3議会で施行延期が可決された。翌年第2次伊藤内閣のもとで法典調査会が設置され,新たにドイツ民法をとりいれた民法が起草され,議会での可決をへて,98年施行された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「民法典論争」の解説

民法典論争
みんぽうてんろんそう

明治中期,1890年公布の民法をめぐって行われた論争
1893年1月から施行されることになっていた民法に対し,伝統的な風習・道徳を破壊する危険があるとの反対論がおこり,論争がやかましくなった結果,'92年の第3議会は民法・商法の施行延期を決定した。それはフランス法学派とドイツ法学派,自由主義と国家主義の対立でもあった。

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改訂新版 世界大百科事典 「民法典論争」の意味・わかりやすい解説

民法典論争 (みんぽうてんろんそう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「民法典論争」の意味・わかりやすい解説

民法典論争
みんぽうてんろんそう

法典論争

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世界大百科事典(旧版)内の民法典論争の言及

【法典論争】より

…【河上 倫逸】
[日本]
 日本では,1890年に公布された民法典および商法典の実施可否をめぐって,延期派と断行派に国論を二分するはげしい論争が起こった。この法典論争は,個別に〈商法典論争〉あるいは〈民法典論争〉とも呼ばれるが,論争の焦点が民法典の実施可否に置かれていたこともあって一般に〈民法典論争〉と通称されることもある。1880年以来本格的な編纂が開始された民法は,90年4月にフランス人ボアソナードの起草になる財産法の部分が,同年10月に日本人委員の起草になる身分法の部分が,いずれも元老院・枢密院の審議,修正を経て公布され,ともに93年1月1日から施行されることになった(旧民法)。…

【民法】より

…この草案は,司法省法律取調委員会,元老院,枢密院などの議を経て修正を加えられた後,90年に公布され,93年からの施行をまつばかりとなった(旧民法という)。ところが,公布前後の時期から,旧民法は日本の民俗慣習に合わないから施行を延期すべきだという議論が出てきて施行賛成派との間に論争を起こし,朝野あげての大議論にまで発展した(民法典論争,ないし法典論争と呼ばれる)。1892年には旧民法の施行延期を求める法案が議会で可決され,旧民法は流産してしまった。…

※「民法典論争」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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