水産業協同組合法(略称、水協法。昭和23年法律第242号)を根拠に組織される漁業者および水産加工業者の協同組合。
第二次世界大戦前においては漁業・水産業の協同組合に関する個別法は存在しなかったが、敗戦後の民主化政策(制度改革)の実施過程において、戦時中の団体制度の廃止を含め新たな協同組合理念に基づき、1948年(昭和23)に水産業協同組合法が制定された。「組合は、その行う事業によってその組合員又は会員のために直接の奉仕をすること」(第4条)を目的として設立されている組合の総称がこれである。この制度に基づく当該産業の協同組合は、農業協同組合法(農協法。1947年制定。昭和22年法律第132号)にはみられない特徴を有する。
第一に、水産加工業者の協同組織を含んでいることである。水産業協同組合は漁業協同組合(いわゆる漁協)、漁業生産組合および漁業協同組合連合会(都道府県漁業協同組合連合会〈漁連〉や全国漁業協同組合連合会〈全漁連〉)、水産加工業協同組合(加工協)および水産加工業協同組合連合会(加工連)など2系統5種類が基本形とされ、この規定が今日も踏襲されている。すなわち、漁民および中小漁業者として漁業生産の担い手の組織系統と、中小の水産加工業者の組織系統とを含む構成とされている。水産加工業は産地加工を中心として地区の漁業生産と不可分に関係するものと位置づけられてきたからである。
第二に、漁業や養殖業における生産面の協同化を図るため漁民が組織する漁業生産組合を水産業協同組合と位置づけたことである。漁業生産の協同化の推進は、漁業制度改革が掲げる漁業の経済・社会的地位向上を図り、かつ漁民の協同組織を振興する手段として重視されたからである。今日、漁業生産組合は3人以上の漁民で設立でき、また株式会社への組織変更も可能とされる(2018年漁業法改正による。なお、農協法においては後に1962年改正の時点で農協として農事法人組合が位置づけられ、農業生産の協業の促進がもくろまれる)。
なお、1983年の法改正により、水産業協同組合の種類には2系統組織の共済集団を包含した連合組織として共済水産業協同組合連合会が追加されることとなった。
水産庁「水産業協同組合年次報告」(2020年度末統計)によれば、全国に漁協数は1771、生産組合は449、加工協は90を数える。協同組合理念に基づく漁業者および水産加工業者の協同組織は、200海里経済水域時代に入り水産資源や漁場環境の持続的利用が重要視され、また水産物の国民への安定的供給や国民経済の健全な発展を意図し、漁業・漁村の多面的機能の発揮も期待されている水産基本法(2001年制定。平成13年法律第89号)の趣旨を実現する意味においても、いっそうその存在価値を増しているといえる。
なお、水産加工業者の協同組合については、中小企業等協同組合法(1949年制定。昭和24年法律第181号)に基づいて設立されている水産品製造業者の組織もあるが、「水産加工業協同組合」の名称を付するのは水産業協同組合に限られる。
[廣吉勝治・工藤貴史 2022年7月21日]
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…漁民を構成員とする協同組合で,水産業関係の協同組合,すなわち漁業生産組合,水産加工業協同組合とともに,水産業協同組合法(1949公布)に基づき行政庁の許可を得て設立されたものであり,これら3組合のうちで数の上でもまた活動範囲の点でも,最も大きい。漁協と略称。…
※「水産業協同組合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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