江戸の町々を支配する町役人。初めは町人のなかで由緒のある者や、幕府に貢献した者が名誉職として任命されたようである。こうした草創(くさわけ)名主に対し、17世紀の前半までに行政官として選出されたもの(古町(こちょう)名主)、以後町並地(まちなみち)の拡大とともに増加したもの(平(ひら)名主)、寺社門前町の編入で増加したもの(門前名主)などが区別された。名主は数か町ないし十数町を支配し、江戸町年寄の下で、触(ふれ)の伝達、人別調査、訴訟の和解、証文の確認などを行った。支配する町に居住することが原則で、兼業は認められなかった。給与(役料)は町々から徴収し、年間3両ほどの者から、大伝馬町などを支配する馬込勘解由(まごめかげゆ)のように212両余の者まで多様である。1845年(弘化2)の232人の名主の平均役料は53.8両である。中期以後は23組に編成され、町奉行(まちぶぎょう)のもとで多様な業務に従事させられた。1869年(明治2)3月廃止。
[吉原健一郎]
『水江漣子著「町名主」(『江戸町人の研究4』1975・吉川弘文館)』▽『吉原健一郎著『江戸の町役人』(1980・吉川弘文館)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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