抗毒素(読み)コウドクソ(その他表記)antitoxin

翻訳|antitoxin

デジタル大辞泉 「抗毒素」の意味・読み・例文・類語

こう‐どくそ〔カウ‐〕【抗毒素】

細菌毒素蛇毒中和して無毒化する抗体。また、それを主成分とする血清製剤ジフテリア破傷風ボツリヌス中毒・毒蛇咬傷こうしょうなどに対する血清療法に用いられる。

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精選版 日本国語大辞典 「抗毒素」の意味・読み・例文・類語

こう‐どくそカウ‥【抗毒素】

  1. 〘 名詞 〙 特定細菌毒素を、抗原抗体反応によって中和させ無毒にする抗体。ジフテリア菌破傷風菌などの毒素に対する抗毒素がよく知られ、血清療法(抗毒素療法)に用いられる。〔現代新語辞典(1919)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「抗毒素」の意味・わかりやすい解説

抗毒素 (こうどくそ)
antitoxin

破傷風,ジフテリアなどのような細菌が出す毒素,ヘビサソリなどの動物の毒素などを中和する抗体治療に用いられるが,このような療法を血清療法という。毒素を出す細菌が原因となる感染症では,毒素により神経・筋肉などの組織傷害をうけて疾患の原因となる。この毒素を無毒化してヒト,ウマに注射すると,毒素を中和する抗毒素抗体がその血清中にできてくる。この血清から免疫グロブリンを精製したものが抗毒素製剤である。抗毒素は,E.ベーリング北里柴三郎により1890年に開発され,以来ウマの抗毒素製剤が用いられてきたが,ウマの免疫グロブリンもヒトには異種のものであり,これに対する抗体が治療をうけた患者に生じることが原因となって血清病になることがあるので,抗毒素を多量に含むヒト血清から免疫グロブリンを精製した製剤が用いられるようになってきている。しかし,ヘビ,サソリなどの抗毒素はウマ血清由来のものが多い。
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百科事典マイペディア 「抗毒素」の意味・わかりやすい解説

抗毒素【こうどくそ】

毒素,あるいは毒素の抗原性を保ったまま無毒化したもの(トキソイド)を生体に注射すると,血清中に産生され,この毒素と特異的に結合して毒作用を中和する抗体をいう。ジフテリア,破傷風,ガス壊疽(えそ)等の毒素性疾患や,毒ヘビ咬傷(こうしょう)の治療に用いられるが,一度毒素が親和性のある組織に結合してしまうと,抗毒素の作用は期待できない。ふつう抗毒素血清の形で使用する。→血清療法
→関連項目沈降反応

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「抗毒素」の意味・わかりやすい解説

抗毒素
こうどくそ
antitoxin

毒素に対して生体内でつくりだされる抗体。毒素を繰返し動物に注射すると,抗体であるその毒素に特異的に反応してその毒作用を中和する抗体が,血清中に出てくる。これが抗毒素あるいは抗毒素血清といわれるものである。力値の高い抗毒素は血清療法といって,毒素性疾患の治療や予防に用いられる。 1890年に北里柴三郎と E.ベーリングは,純粋培養した破傷風菌から毒素を取出し,これをウサギに注射して抗毒素をつくらせて,この血清を人間に注射するという血清療法を発見した。抗毒素には特異性があり,ジフテリア抗毒素はジフテリア菌にしかきかない。毒素より抵抗性が強く,乾燥血清では 110℃の加熱に耐えられるので,低温,暗所,真空内でかなり長期間保存できる。

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栄養・生化学辞典 「抗毒素」の解説

抗毒素

 ある毒素の特異的抗体をいい,毒素の中和に用いて中毒を治療する.

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世界大百科事典(旧版)内の抗毒素の言及

【免疫】より

…ワクチンも,生きた微生物を含んでいる生菌ワクチンから,加熱その他の方法で殺した菌で行う死菌ワクチン,さらに細菌のつくり出すタンパク質や多糖類などでも有効な場合があることがわかり,現代においては有効部分を人工合成した合成ワクチンも登場するようになっている。
[抗毒素の発見]
 この間の重要な発見は,1890年のE.vonベーリングと北里柴三郎による抗毒素の発見である。彼らは,ジフテリアや破傷風などのように,毒素を産生する菌を注射した動物の血液の中には,毒素を特異的に中和する働きをもっている物質が出現することを報告し,この物質が血液中の液性成分,すなわち血清の中に含まれていることを証明した。…

【免疫療法】より

…これは減感作療法あるいは脱感作療法と呼ばれ,気管支喘息(ぜんそく),花粉アレルギー,一部の薬剤アレルギーなどに対して行われている。(2)受動免疫療法は人体のもっていない特異抗体を補充投与する治療法で,細菌や他の生物由来の毒素に対する抗毒素の投与が行われている。代表的なものとしてはジフテリア,破傷風,ガス壊疽,ハブ毒などに対する抗毒素の投与である。…

※「抗毒素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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