(1)中国,モンゴル,朝鮮半島の伝統的な弦楽器の一種。台形の箱形チターで,両手に各1本ずつ持った2本の細長い撥(琴竹)で交互に打弦する。弦は鋼鉄とシンチュウの金属弦で,奏者の手前(低音)から向こう(高音)にかけて約20コースが平行に張られる。各コースは2~3本の複弦である。
この楽器は,中国語ではヤンチン,モンゴル語ではヨーチン,朝鮮語ではヤングム,ウイグル族の間ではイェンジンと呼ばれている。日本へは江戸末期に明清楽の楽器として伝来し,ヤンキンと呼ばれたが,ほどなく姿を消した。
名称からも明らかなように,洋琴は外来の楽器で,中国へは清朝初期(17世紀)にイエズス会の宣教師らによって西洋からもたらされた。朝鮮半島へは李朝英祖(在位1724-76)の頃中国経由で伝来したといわれる。朝鮮語では欧邏鉄糸琴とも呼ばれる。したがって,洋琴の直接の祖先は西洋のダルシマーであるが,その起源は西アジアに求められ,形状,奏法の点でイランのサントゥールが最も近い。サントゥールは中央アジア,インド(とりわけカシミール地方),チベットへ東流してきているので,これが西域の楽器として清朝中国へ伝来した可能性もまったくなくはない。なお,中国ではこの楽器を楊琴,銅子琴,打琴と呼ぶこともある。
(2)日本で明治時代に音楽取調掛でピアノを〈洋琴〉と称したが,今日ではほとんど用いられない。現代中国語ではピアノを鋼琴と称し,洋琴は用いない。
執筆者:柘植 元一
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中国のチター属打弦楽器。揚琴とも書く。台形の木製共鳴胴(底辺70~100センチメートル、奥行40~50センチメートル)の上に2~3列の可動ブリッジを置き、1コース2~4弦で7~18コースの金属弦を張る。奏者は楽器を台の上に置き、2本の細長い竹の桴(ばち)でおもにトレモロ奏法や強弱法を用いて打弦する。イランのサントゥールやヨーロッパのダルシマーなどの系列に属するが、楽器の由来については、17世紀(明(みん)朝末期)に広東(カントン)地方に伝えられたこと以外は不明である。初期のものは胡蝶琴(こちょうきん)とよばれ、蝶の形をした小型胴に7コースの弦が張られていた。ベトナムや朝鮮半島、モンゴルの同型楽器は中国の洋琴が伝播(でんぱ)したものである。今日の中国では、伝統的合奏や歌劇の伴奏、あるいは、西洋楽曲の独奏などに広く用いられている。
[山田陽一]
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