津地鎮祭訴訟(読み)ツジチンサイソショウ

デジタル大辞泉 「津地鎮祭訴訟」の意味・読み・例文・類語

つじちんさい‐そしょう〔つヂチンサイ‐〕【津地鎮祭訴訟】

三重県津市が市立体育館の建設に際し、公金を支出して地鎮祭を行ったことについて、憲法に定められた政教分離原則に反するかどうかが争われた裁判最高裁判所は昭和52年(1977)、特定宗教援助助成・促進したり、他の宗教を圧迫干渉を加えたりするものとは認められないとして、憲法に違反しないとの判断を下した。

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改訂新版 世界大百科事典 「津地鎮祭訴訟」の意味・わかりやすい解説

津地鎮祭訴訟 (つじちんさいそしょう)

1965年に三重県津市は,神道式による市体育館起工式を行った。その起工式は,憲法20条3項〈国およびその機関は,宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない〉にいう宗教的活動に当たるとして,そこに招待された市会議員によって提起された訴訟が津地鎮祭訴訟である。第一審以来,宗教的行為と習俗的行為の区別がおもな争点となった。第二審の名古屋高等裁判所は起工式を違憲と判決したが,最高裁判所は8対5で合憲と判決した。すなわち,その多数意見によれば,〈政教分離〉の対象となる国家と宗教の間には社会的文化的条件からある程度のかかわりあいを認めざるをえない。〈信教の自由〉の確保という根本目的との関係でそのかかわりあいが許されない場合と限度をみつけることが問題である。そこで許されない宗教的活動とはその行為の目的が宗教的意義を持ち,その効果が宗教への援助,助長,促進,圧迫等になる行為である。本件起工式は宗教とかかわりあうが,しかしその目的は工事の安全祈願であり効果も禁止されるものに当たらない。これに対し,少数意見は,国家と宗教のかかわりあいとは明確でなく,〈政教分離〉の解釈をゆるやかにすると〈信教の自由〉の保障をゆるがしかねないとしている。

 学説では,多数意見を支持するものもあるが,批判する説が強い。というのは,多数説のいう目的効果基準はアメリカ連邦最高裁判所が福祉国家的発想から形式的な〈政教分離〉の解釈を避けるために用いたものであって,精神的自由にかかわる本件とは事情が違うからである。
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