つ【津】
[1] 〘名〙
※古事記(712)下「浪速の渡りを経て青雲の白肩(しらかた)の津(つ)に泊てたまひき」
※
万葉(8C後)一九・四二四六「沖つ波辺波な越しそ君が船漕ぎ帰り来て津
(つ)に泊つるまで」
② 泉など、水の湧き出るところ。
※万葉(8C後)九・一七五九「鷲の住む
筑波の山の 裳羽服津
(もはきつ)の その津
(つ)の上に 率
(あども)ひて 未通女壮士
(をとめをとこ)の 行き集ひ」
③ 港をひかえて人の集まる土地。
港町。また、一般に人の多く集まる
地域をいう。古代には薩摩坊津
(ぼうのつ)・筑前博多津・伊勢
安濃津を三箇
(さんが)の津と呼び、また、
江戸時代には、特に京都・
大坂・江戸を三箇の津と称した。
※評判記・吉原用文章(1661‐73)五三「山しろの国、あわたくちとやらんの〈略〉津におかれし事」
※俳諧・奥の
細道(1693‐94頃)
敦賀「十四日の夕ぐれつるがの津に宿をもとむ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「津」の意味・読み・例文・類語
しん【津】[漢字項目]
[常用漢字] [音]シン(呉)(漢) [訓]つ
〈シン〉
1 舟着き場。渡し場。「津渡/河津・入津・要津」
2 体から出る液体。つば・汗など。「津液」
3 次々とわき出てうるおす。「興味津津」
〈つ〉「津波・津津浦浦」
[名のり]ず
つ【津】[地名]
三重県中部、伊勢湾に面する市。県庁所在地。もと藤堂氏の城下町。県行政・文教の中心地。古く、安濃津と称し、三津の一。平成18年(2006)1月、久居市や周辺8町村と合併。人口28.6万(2010)。
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
津【つ】
船舶が出入りする海岸・河岸の交通の要地。泊(とまり)とも称し,のち湊(港)などとよばれるようになった。古代律令制下では国家貢納物を移出する国津(国府の外港)や郡衙(ぐんが)の外港として機能した郡津があった。古代末期以降,荘園などの開発が進むに伴い各地に津が成立した。普通,津には市が付設され,その地域における重要な物資集散の場となった。鎌倉時代初期,伊勢神宮がその神人(じにん)に対する津料賦課の免除を〈諸国往反津泊預〉に要求した例にみられるように,中世には各地で通関税である津料(勝載(しょうさい)料・官食料・置石・升米・帆別銭などともいう)が徴収されていた。津料,あるいは市場税も合わせた市津料の一部は,津の諸施設の維持管理のために使用された。津の中には中世都市として発展し,伊勢国桑名の〈十楽の津〉や泉州堺のように自由都市となる場合もあった。おもなものに7〜8世紀に栄えた難波(なにわ)津や日本三津とされる薩摩坊津(ぼうのつ)・筑前博多津・伊勢安濃津(あのつ)などがある。なお日本三津は明(みん)の《武備志(ぶびし)》にみえ,三箇の津ともよばれた。→港湾/港町
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
つ【津】
船舶の来着・出発する海岸・河岸の交通要地の総称。ただし,地名としては,多く,特定の機能上,地形上の特徴を有する湊(みなと)・泊(とまり)・渡しなどに該当しない場合に付される。川の場合は川津と称する。古代律令制社会では,民部省の管掌下,国郡司による国家的管理をうけた。中世では,その伝統をひく国津(国府の外港)が重要な位置を占め続けるとともに,《庭訓往来》に領地開発の際設置すべきものとして〈廻船着岸之津〉が上げられているように,さまざまな津が各地域の開発にともなって簇生した。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
世界大百科事典内の津の言及
【渡し】より
…官道においても渡海を要する場所は〈渡〉と呼ばれたようで,《出雲国風土記》に〈隠岐の渡,千酌(ちくみ)の駅家(うまや)の浜〉とある。《延喜式》によれば越後国の渡戸駅に船2艘を配しているのも,佐渡国の渡津であったからであろう。《続日本後紀》の承和2年(835)条には,東海道,東山道の河津において,渡舟が少なく橋の設備もないため,諸国から調を京に運ぶ運脚夫たちが渡ることができないので,渡舟2艘を増すべき旨の勅が記されている。…
【港湾】より
…船を安全に出入り,停泊させ人や貨物などの水陸輸送の転換を行う機能をもつ沿岸域の空間。日本では古来,津(つ),湊(みなと),泊(とまり)などと称していた。これらの語に代わって新たに港湾ということばがつくられ用いられるようになったのは明治になってからである。…
【旅券】より
…【山本 泰男】
[中国]
中国では古来国内旅行にも身分証明書を必要とした。旅行者を取り締まるため陸上交通では関,水上交通では津を置いた。漢代では旅行者の身分を証明する文書は一般に伝と呼ばれたが,そのうち木簡に書いたものを棨(けい)といい,本人の居住する郷の嗇夫(しよくふ)という官が前科のない旨を証明し,県の長吏が副署し,津関においてとどめないように依頼する形式であった。…
※「津」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報