日本大百科全書(ニッポニカ) 「活動分析」の意味・わかりやすい解説
活動分析
かつどうぶんせき
activity analysis
企業にとっての最適な生産方法の選択や原材料・労働の配分、あるいは経済社会の全体にとっての各産業への効率的な経済的資源の割当て、などの問題を考える際に用いられる分析方法。計算技術としての活動分析は、第二次世界大戦中にアメリカで軍事問題処理の手法として利用されていたものであるが、戦後、経済理論に関連して発展するようになり、実証分析、計画問題などに限らず、経済理論の進歩のためにもきわめて重要な役割を演じている。
活動分析は、一つの生産活動を一組の投入要素と産出物の集まりとして表現する「アクティビティ(活動)」を基本単位として取り扱う。いま、m種類の投入要素をそれぞれa1、a2、……、amの量だけ用いてn種類の産出物がそれぞれb1、b2、……、bnだけ得られる単位生産プロセス、あるいは技術を考えるとき、これを(a1,a2,……,am;b1,b2,……,bn)と表示して「アクティビティ」とよぶのである。そして、このアクティビティの基本的性質として、あるアクティビティが存在すれば、その一定倍のアクティビティ(すなわち、生産ベクトルの各構成要素を一定倍したもの)もまた存在すること、さらに、ある二つのアクティビティが存在すれば、それらの和であるアクティビティ(すなわち、二つの生産ベクトルのそれぞれ対応する要素の和を要素とする生産ベクトル)も存在すること、の二つが仮定される。前者は「規模に関して収穫不変」を意味し、後者は二つのアクティビティ間に「外部経済が存在しない」ことを意味する。
活動分析は、この収穫不変と外部経済の不存在という経済社会の環境として一つの標準的な状況を「アクティビティ」に関する基本的な性質として前提し、それに基づいて生産活動や資源配分に関する問題を分析するのである。これは、従来の古典的な経済理論の分析方法のうち、現実経済の姿に合致しないと思われる部分を修正する新しい内容をもつものでもある。たとえば、伝統的な経済理論においては、ある生産活動を行うにあたって利用可能な生産方法(技術)は無数に存在すると仮定し、それに基づいて生産関数を表現してきたが、実際には、ある工場で現実に考慮の対象となりうる生産方法は無数には存在せず、数種類であるのが一般的である。このような場合に、その有限個の生産方法の一つ一つを独自の「アクティビティ」として取り扱うことにより、より現実の姿に沿った分析ができることになる。
一国経済全体の整合的実証分析や計画策定の分野で近年目覚ましい成果をあげている産業連関分析は、ただ1種類の産出のみを行うアクティビティ、すなわち、前出の生産ベクトルにおいてnが1の場合の生産ベクトルを基本的構成要素とした理論構成をとるものであり、また、現実の企業運営面などで、生産、流通、人員・資材配置などの問題解決のため幅広く用いられているリニア・プログラミングの手法も活動分析と同じ考え方に基づくものである。
[高島 忠]
『R・ドーフマン、P・A・サミュエルソン、R・M・ソロー著、安井琢磨他訳『線型計画と経済分析』(1958・岩波書店)』▽『P・A・サミュエルソン著、篠原三代平訳『サミュエルソン経済学体系6』(1983・勁草書房)』▽『小山昭雄著『線型計画入門』(日経文庫)』