改訂新版 世界大百科事典 「流動層」の意味・わかりやすい解説
流動層 (りゅうどうそう)
fluidized bed
多孔質板あるいは多孔板からなる底をもつ容器に粒径の小さな粒子(約20μm~2mm)を入れ,気体を底板を通して流すと,気体は粒子間の空隙を通して上方に流れる。このとき粒子には気体の速度に対応した上向きの力が作用する。この力が粒子に作用する重力とつりあうと,粒子は流体のように容易に流動できる状態となる。このような現象を流動化という。さらに気体の流速を増していくと,粒子間の空隙を流れる気体の流速はほとんど変わらず,粒子に作用する上向きの力と重力がつりあった状態にとどまり,残りの気体は気泡を形成して流動化した粉粒体層を吹き抜ける。このように流動化した粉粒体層を流動層という。さらに気体の流速をあげていくと粒子は吹きとばされて容器の外へとび出す。流動層内では,粒子は上昇する気泡によって活発な運動を行っているので,層全体の温度をほとんど均一に保つことができ,その制御も容易である。しかし気体は粒子の空隙を均一に流れるのではなく,大部分が気泡となって吹き抜けるので,固体と気体の接触効果は,気泡とそれ以外の粒子層間の物質交換速度によって支配される。
流動化状態にある粒子は流体のように容器内に連続的に供給したり抜き出したりすることができるので,粉粒体の取扱技術として工業的に広く利用される。その応用例には,乾燥,熱交換,吸着,造粒,コーティングなどの物理的操作のほか,石炭のガス化,フィッシャー=トロプシュ合成,炭化水素の分解改質によるガソリンの製造など化学反応を伴う操作がある。これらは気体によって粉粒体を流動させるもので気固流動層ともいわれる。液体によって流動化させたものを液流動層という。この場合,気泡に相当する粒子の密度の低い部分は形成されず,粒子間の空隙が大きくなって流動化することが多い。
執筆者:古澤 健彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報