網役(読み)あみやく

精選版 日本国語大辞典 「網役」の意味・読み・例文・類語

あみ‐やく【網役】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代、漁労者から取り立てた役銭(永、銀)。一度査定された額は漁獲多少にかかわりなく、定納の小物成(こものなり)として年々徴収された。
    1. [初出の実例]「是は浜辺又は大川通魚猟をいたし、運上出すを網役といふ」(出典:辻六郎左衛門上書(18C前か)網役之事)

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改訂新版 世界大百科事典 「網役」の意味・わかりやすい解説

網役 (あみやく)

江戸時代の漁業年貢のなかで,漁網に賦課されていたものをいう。実際の漁業年貢はかなり多種多様,複雑であり,各藩間の差異も大きかったとみられる。さらにその具体的基準について把握された業績がないので,その全貌についてはまだ明らかにされていないが,大別するとその課税対象は,(1)漁業者,(2)漁場,(3)漁船漁具,(4)漁獲物などである。(4)のなかには分一(ぶいち)税も含まれていたが,その他は定額の小物成(こものなり),すなわち雑税であった。(3)の漁具のうち主要なものが,漁網とみられる。網役は漁網に対する年貢の総称でもあるが,実際の課税では藩によって,網役が総称としての網役の一部として実際に賦課されるケースもあった。いずれにしろ網役自体の種類は多かったが,ただ網役の課税対象となるのは,各地の主要漁網であったと思われる。だいたい定額の金・石納であったが,その税率などの内容はまったくわかっていない。
漁業年貢
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「網役」の意味・わかりやすい解説

網役
あみやく

江戸時代、浜辺や川で漁業を行う漁師より徴収した役銭(やくせん)。網の種類、大小によって課税され、網の増減によってその額は増減した。また、同じ地域の同種の網でも、漁場の良否領主の違いなどによって網役の額に差が生じた。このほか、網役額が一定し、漁獲の多少や網数の増減にかかわりなく、村内網主一同で負担する定式網役もある。網役の貢租(こうそ)形態は、現物納(漁獲魚、米)か貨幣納(金銀永銭)かであったが、現物納は江戸初期から中期にかけてみられ、中期以降は貨幣納が一般化した。

[川鍋定男]

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世界大百科事典(旧版)内の網役の言及

【漁業年貢】より

…納入形態は別にして,その年貢は商人請負漁業以外は,おおむね村民の連帯責任による浦請の形で納められ,課役の対象も地域を問わず,ほぼ漁場,漁具・船などの生産手段,漁獲物,漁業者に限られている。 課役の名称は藩,地域,漁業種類によって雑多であるが,大略列記すると,海高,水主役(役米・役銀),網代役,網役,池魚役,川役,海役,船役,御菜魚代,漁猟運上,分一役などがある。いずれも小物成,浮役,運上役,冥加役に分類できる。…

※「網役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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