( 1 )平安時代の古文書では、年貢を運搬する意味で使用される場合が多いが、古くは年貢に限定されず、種々の物について使用された。
( 2 )京都へ運送する場合に限らず、各地域の領主への年貢の運搬についても使われている。従って、「運上」の原義は上位のものに向かって物品を運搬し、進上することと推察される。それが年貢に関する用語として漸次固定し、その後、②のように課税そのものを意味するようになったのであろう。
江戸時代における雑税で,小物成(こものなり)の一種。商業,工業,運送業,漁業,狩猟などに従事する者に対して課せられた。中世の荘園制下にあっては,年貢などを納める場合,とくに遠隔の地,たとえば都まで運んで納めることを運上といった。したがって,直接課税の意味を含まなかったが,近世に入って課税を意味するものとなった。また,本来は各種営業に対する課税の中で,一定の税率を定めて納めさせるものを運上と称し,免許を許されて営業する者が,その利益の一部を上納するものを冥加(みようが)と呼んで区別した。前者は小物成に属し,後者は献金に属するが,現実には運上も冥加も同一の意味に混同して使われている場合が多い。さらに,運上・冥加はともに年期を限り,あるいは,年によって増減することがあるので,その意味では小物成の中の浮役(うきやく)に含まれる。運上の種類は多く,地域によって特殊な名称をもつものも多い。また,領主財政が窮乏すると,財源の一つとして注目された。運上の種類と内容は別記のとおりであるが,これらの運上は営業税的性質のものもあれば,免許手数料的なものもあり,その性格は多様である。また,冥加と同じく年期を限って賦課される場合が多く,満期になるとさらに延長された例が多い。幕府はとくに運上方を設け,ここで諸国運上高の調査,増徴・免除・新規取立てなどに関するいっさいの事務を扱った。明治になると,政府は新しい税制が確立するまで運上・冥加の存続を命じ,その中で重要なものは漸次国税の中に編入し,免許税,免許料,何々税と称した。1875年2月,従来の各地方での雑税1500種が廃止されると,これに含まれて消滅した。
執筆者:吉永 昭
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中世では、荘園(しょうえん)の年貢を領主のもとへ運ぶことを運上と称したが、中世末期ころから課税の意にも用いられるようになり、近世に至って小物成(こものなり)(雑税)の一種の意を確立した。
近世においては、商業、工業、漁業、狩猟業、運送業などの各種の営業に従事する者に賦課された。本来は、一定の税率をもって納付するものを運上といい、税率なく、免許を得て営業する者が納付するものを冥加(みょうが)という。しかし、両者は同一義に用いられる場合が少なくなかった。運上、冥加は年季を限って賦課され、その賦課額は年により増減した。年季満期には願いによって審議し、延長が許可された。賦課額が増減することからみれば浮役(うきやく)に属する。運上の種類には、水車、市場、問屋、油絞(あぶらしぼり)、絹、紙漉(かみすき)、酒、鉄砲、金銀銅鉄明礬(みょうばん)硫黄(いおう)砥石(といし)山、長崎などの諸運上があり、また地方により特殊な種目が存在した。
[川鍋定男]
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(1)中世,年貢を京都の領主のもとへ運び納めること。租税としての意味はない。(2)江戸時代の雑税で小物成(こものなり)の一種。おもに商・工・鉱業や漁・狩猟など各種の営業や生業に対し一定の税率で課税したもので,営業税・免許税の性格をもつ。類似のものに冥加(みょうが)があるが,冥加は税というより献金としての性格が強く,税率は一定していない。しかし両者とも浮役(うきやく)の一部とされたので,普通は混同して用いられている。運上の種類は多様で,おもなものに水車運上・問屋(といや)運上・池運上・鳥運上・油船運上・鉄砲運上・酒運上・海苔運上などがあった。幕府では,運上の収納を勘定所の運上方がつかさどった。
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…飛驒国で中世末のころから行われた百姓稼山(白木稼ともいう)は,領主の御林山で用材を採出した跡に放置された残材(根木,末木,悪木,枝条など)を処理して,各種の白木類(短軽材や割材)を再生産するか,または御林内の枯損木(立枯木や風・雪折木など)から家作木や白木・薪などを採出して,近隣諸国にまで売りさばくことを免許された稼山をいう。この稼山製品には山役人の検木と,採材量に応じた運上の負担が義務づけられていた。類似の稼山は木曾,伊那の御林山にも見られたが,その多くは臨時的に行われる〈御救山(おすくいやま)〉であったことと,出願者が村単位であった点に多少の相違が見られる。…
※「運上」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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