海洋ごみ(読み)かいようごみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「海洋ごみ」の意味・わかりやすい解説

海洋ごみ
かいようごみ

海中を漂っているごみや、海岸に漂着したごみの総称。海ごみともいう。海洋ごみは漂流ごみと漂着ごみの2種類に大別される。漂流ごみは海中ごみともよばれており、(1)海底堆積(たいせき)したごみ、(2)海中を漂っているごみ、(3)海面を漂流しているごみ(海面浮遊ごみともいう)をさしている。漂着ごみは海岸漂着ごみともよばれ、海と陸が接する砂浜岩礁干潟などの海岸に押し寄せたごみのことである。いずれの場合でも収集や処分がむずかしい場所であると同時に、生態系を含めた環境や景観が悪化し、漁業や農業への深刻な被害が発生している。漂流、漂着ごみは塵芥(じんかい)類、プラスチック類、紙類が全体の8割を占め、そのほかに金属類やガラス類などがある。日本の漂着ごみは年間約19万トン(2001~2010年調査からの推定)で、量的に多いごみの種類は、漁網やロープ、フロートといった漁業に由来するもの、工業薬品用のポリ容器などで、薬品などが入った危険な状態のままで漂流しているものもある。これらに次いで、人間の日常生活用品に由来するごみも多く、ポリエチレン製のレジ袋、菓子や食品の包装袋、ペットボトルや食品容器、カップ麺(めん)容器、薬品や化粧品などの容器、発泡スチロール、バッグや靴などといった多種多様なごみがある。海洋ごみは、山、川、海へとつながっている水の流れを通じ、国内で投棄されたものが海岸に漂着する場合が多いが、漂着する場所によっては、周辺国から流出したものが漂着する場合も多くみられるようになっている。海洋ごみは水分塩分、砂を含むために、かさや量が膨大であり、分別がむずかしいのでリサイクル化は困難である。漂着ごみが流れ着く離島の多くは処分施設がないところが多く、産廃業者などに1トンあたり数万円の手数料を支払い、埋立て処理を依頼しているケースが多い。

 このような状況を踏まえ、国は海岸漂着物対策を主体とし、「美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律」(平成21年法律第82号、略称は海岸漂着物処理推進法)を、2009年(平成21)に議員立法として成立させた。同法は海岸漂着物対策を推進するため、(1)海岸漂着物などの円滑な処理と発生の抑制、(2)多様な主体の適切な役割分担と連携の確保、(3)国際的な協力の推進、を対策の3本柱としている。海岸漂着物処理推進法に基づき、環境省は2013~2014年度に漂着ごみの回収や処理費用を国が全額補助する事業を行っている。また、2015年度からは海底ごみを含む漂流ごみ全般を全額補助の対象として拡大することを決定し、対策を強化する方針を示している。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android