鹿児島県奄美(あまみ)諸島与論島、沖縄県国頭(くにがみ)郡一帯、島尻(しまじり)郡伊平屋(いへや)諸島などで行われる村の行事。地元では海神(うみがみ)(ウンガミ、ウンジャミなど)という。『琉球国(りゅうきゅうこく)由来記』(1713)には「海神折目(うみがみおりめ)」とある。折目は節日の意である。国頭郡本部(もとぶ)半島地方では大折目(おおおりめ)(ウフウンミ)ともいう。
旧暦7月の行事で、盆行事後の亥(い)の日とする所が多い。穀物の収穫を終えた、農耕暦の1年の境目の時期で、そのときにあたり、祝女(のろ)を司祭者として、海神を迎え、豊作と豊漁を祈願する。シヌグと対(つい)をなしている村も多い。国頭郡北部には、シヌグと隔年に行う村もあり、海神祭を女の節供、シヌグを男の節供と説明したり、シヌグを大(ウフ)シヌグ、海神祭をシヌグ小(グワー)と規模により呼び分けたりしている。シヌグが、成人儀礼的な男子を中心とする村落組織による祓(はらえ)の行事であるのに対して、海神祭は、与論島で祝女海神(のろうみがみ)(ヌルウンジャミ)というように、成巫(せいふ)儀礼を伴う、祝女が率いる女子中心の祭祀(さいし)組織による祈願の神事の色彩が濃い。
神事は、村による変化も大きいが、海に突き出た土地から海神を迎え、村の祭場で神歌を歌って踊り、魚の網漁、イルカ漁、船漕(こ)ぎなどの所作事をするのが普通である。競漕(きょうそう)を実演する村もある。イノシシを弓矢で射る所作事をし、イノシシの模擬品を、山の神の土産(みやげ)として、海神に供える神事もある。イノシシ狩はシヌグで行う村もあり、海神祭とシヌグは内容にも交錯しているところがある。国頭郡では、シヌグとともに、もっとも大掛りな村の行事になっている。
[小島瓔]
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…八重山各地では6月にプールとよばれる稲やアワの収穫祭が行われ,西表島古見など4ヵ所ではこの祭りに豊穣をもたらす仮面仮装神であるアカマタ・クロマタが登場する。沖縄島北部の沿岸では7月20日以後の亥の日または6月中の亥の日に〈海神(うんじやみ)祭〉が行われる。これは海神を迎えまつって海の幸を祈る祭りである。…
…海神を祭る神社の主要なものとして,宗像(むなかた)大社,住吉神社,大山祇(おおやまづみ)神社,金毘羅社などが全国的に勧請流布している。海神祭は神霊を奉安した御輿を海中渡御(とぎよ)するものをはじめ,御旅所神幸や競漕するものなどが見られる。沖縄本島北部の村々では,海神を迎える海神(うんじやみ)祭が盛んで,海神と山神との交遊する日の祭りという。…
※「海神祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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