仏忌(ぶつき),常楽会ともいう。釈迦入滅の2月15日に,遺徳を追慕し報恩謝徳の意を表す仏会。涅槃は元来,物の消滅する意味である。釈迦の入滅の日については異説があるが,《大般(だいはつ)涅槃経》などにある2月15日とする説が流布するにいたり,日本でも平安時代以降,諸寺において広く行われた。滋賀の石山寺では805年(延暦24)に創始されたと伝え,13世紀ころには盛大な年中行事の一つであったことが《石山寺縁起》で知られるし,奈良興福寺でも,860年(貞観2)に修円の高弟寿広已講によって西金堂で創始され,常楽会と称して同寺屈指の仏事の一つとなった。常楽とは,涅槃の四徳の中の常楽,すなわち常住にして移り変りなく,苦もなく楽ある意より称したもので,《三宝絵詞》《年中行事抄》《拾芥抄》などにも見える。鎌倉時代に笠置寺貞慶や高山寺明恵が四座講式(涅槃講式,羅漢講式,遺跡講式,舎利講式)などを著作するにいたって,諸寺で盛んに行われたようで,高野山金剛峯寺の涅槃図を最古として,多くの涅槃図が伝えられている。
執筆者:堀池 春峰
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釈迦(しゃか)入滅の忌日(きにち)に行う法会(ほうえ)。涅槃は、貪(むさぼ)りや怒りなどの煩悩(ぼんのう)の炎が吹き消された状態をいう。すでに煩悩を滅している仏がその肉身をも滅することを、完全涅槃という意味で般涅槃(はつねはん)という。釈迦牟尼仏(むにぶつ)は2月15日に入滅したとされ、後世この日に釈尊涅槃画像を掲げて、『涅槃経』や『仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)』を読誦(どくじゅ)して、報恩供養(くよう)の法会を行った。釈尊が生まれた降誕会(こうたんえ)(4月8日)、悟りを開いた成道会(じょうどうえ)(臘八(ろうはち)、12月8日)とあわせて三仏忌という。
[中尾良信]
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…宗派が異なる場合はもちろん,同一宗派でも同一の行事に異なる法要を勤修する場合がある。たとえば,釈迦涅槃(ねはん)の供養を目的とする涅槃会に,講経論義法要,講式法要あるいは読経法要などが,寺々の事情と判断で勤修されたり,年の初めの祈願を目的とする修正会(しゆしようえ)に,四箇法要,悔過法要,大般若転読法要などがそれぞれに勤修される類である。また反面,多宗派に共通の法要形式を同一の目的で勤修する場合でも,行事の名称は必ずしも同一とはならない。…
…南方仏教で,釈迦の誕生,成道(じようどう),入滅を祝って行われる祭り。中国や朝鮮,日本などの北伝(大乗)仏教では,釈迦の誕生,成道,入滅はそれぞれ別の日のこととされ,それらの日ごとに祝われる(たとえば,4月8日の降誕会(ごうたんえ)または灌仏会(かんぶつえ),12月8日の成道会(じようどうえ),2月15日の涅槃会(ねはんえ)など)。一方,スリランカやミャンマー,タイなど南方仏教の諸国では,これらはいずれもインド暦で第2月とされるバイシャーカvaiśākha月の満月の日のこととされ,毎年,この日にあたる5月末から6月初めの満月の日を中心に,盛大な祭りが行われる。…
…日本では598年(推古6)4月に聖徳太子が,諸王・豪族を集めて法華・勝鬘(しようまん)の2経の講義を行ったことが知られ,仏教の興隆流布とともに各種の法会が催された。経論の主旨を究明しようとした維摩(ゆいま)会,最勝会,唯識会,俱舎(くしや)会,華厳会,法華会をはじめ,国家の安泰を祈る仁王(にんのう)会,大般若会や,釈迦の入滅を追慕し報恩の意を表す涅槃(ねはん)会は,やがて一宗一寺の祖師信仰と結びついて,祖師の御影(みえ)像や堂を造って忌日に法事を行うにいたった。中世には祖先の追善冥福を祈る法会も一般化し,ときに斎(とき)(食事)の席を設けるなどして今日に至っている。…
※「涅槃会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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