涅槃会(読み)ネハンエ

デジタル大辞泉 「涅槃会」の意味・読み・例文・類語

ねはん‐え〔‐ヱ〕【××槃会】

陰暦2月15日の釈迦しゃか入滅の日に行う法会涅槃像をかかげ、遺教経ゆいきょうぎょう読誦どくじゅする。涅槃講常楽会 春》「―や心よい日の兆典司てうでんす太祇

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精選版 日本国語大辞典 「涅槃会」の意味・読み・例文・類語

ねはん‐え‥ヱ【涅槃会】

  1. 〘 名詞 〙 陰暦二月一五日、釈迦の入滅を追悼して行なう法会(ほうえ)涅槃図をかかげ遺教経読誦する。涅槃忌涅槃講。常楽会。如月(きさらぎ)の別れ。涅槃。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「皆まさに仏になるへしとときしるさせ給ひし涅槃経をかうし天すなはち理の会を行ひ仏の恩をむくゆるを涅槃会といふ也」(出典:観智院本三宝絵(984)下)

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改訂新版 世界大百科事典 「涅槃会」の意味・わかりやすい解説

涅槃会 (ねはんえ)

仏忌(ぶつき),常楽会ともいう。釈迦入滅の2月15日に,遺徳を追慕し報恩謝徳の意を表す仏会。涅槃は元来,物の消滅する意味である。釈迦の入滅の日については異説があるが,《大般(だいはつ)涅槃経》などにある2月15日とする説が流布するにいたり,日本でも平安時代以降,諸寺において広く行われた。滋賀の石山寺では805年(延暦24)に創始されたと伝え,13世紀ころには盛大な年中行事の一つであったことが《石山寺縁起》で知られるし,奈良興福寺でも,860年(貞観2)に修円の高弟寿広已講によって西金堂で創始され,常楽会と称して同寺屈指の仏事の一つとなった。常楽とは,涅槃の四徳の中の常楽,すなわち常住にして移り変りなく,苦もなく楽ある意より称したもので,《三宝絵詞》《年中行事抄》《拾芥抄》などにも見える。鎌倉時代に笠置寺貞慶や高山寺明恵が四座講式(涅槃講式,羅漢講式,遺跡講式,舎利講式)などを著作するにいたって,諸寺で盛んに行われたようで,高野山金剛峯寺の涅槃図を最古として,多くの涅槃図が伝えられている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「涅槃会」の意味・わかりやすい解説

涅槃会
ねはんえ

釈迦(しゃか)入滅の忌日(きにち)に行う法会(ほうえ)。涅槃は、貪(むさぼ)りや怒りなどの煩悩(ぼんのう)の炎が吹き消された状態をいう。すでに煩悩を滅している仏がその肉身をも滅することを、完全涅槃という意味で般涅槃(はつねはん)という。釈迦牟尼仏(むにぶつ)は2月15日に入滅したとされ、後世この日に釈尊涅槃画像を掲げて、『涅槃経』や『仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)』を読誦(どくじゅ)して、報恩供養(くよう)の法会を行った。釈尊が生まれた降誕会(こうたんえ)(4月8日)、悟りを開いた成道会(じょうどうえ)(臘八(ろうはち)、12月8日)とあわせて三仏忌という。

[中尾良信]

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百科事典マイペディア 「涅槃会」の意味・わかりやすい解説

涅槃会【ねはんえ】

釈迦の入滅の日に行う,釈迦を追慕する法会。涅槃忌・常楽会・仏忌とも。中国・日本では,2月15日を入滅の日とし,毎年涅槃図掛け,《仏遺教経》を誦する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「涅槃会」の意味・わかりやすい解説

涅槃会
ねはんえ

釈尊が亡くなって涅槃に入ったとされる日に行われる仏教の法会。一般にその日は2月 15日とされ,涅槃忌,常楽会 (じょうらくえ) などともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の涅槃会の言及

【寺事】より

…宗派が異なる場合はもちろん,同一宗派でも同一の行事に異なる法要を勤修する場合がある。たとえば,釈迦涅槃(ねはん)の供養を目的とする涅槃会に,講経論義法要,講式法要あるいは読経法要などが,寺々の事情と判断で勤修されたり,年の初めの祈願を目的とする修正会(しゆしようえ)に,四箇法要,悔過法要,大般若転読法要などがそれぞれに勤修される類である。また反面,多宗派に共通の法要形式を同一の目的で勤修する場合でも,行事の名称は必ずしも同一とはならない。…

【ベーサカ祭】より

…南方仏教で,釈迦の誕生,成道(じようどう),入滅を祝って行われる祭り。中国や朝鮮,日本などの北伝(大乗)仏教では,釈迦の誕生,成道,入滅はそれぞれ別の日のこととされ,それらの日ごとに祝われる(たとえば,4月8日の降誕会(ごうたんえ)または灌仏会(かんぶつえ),12月8日の成道会(じようどうえ),2月15日の涅槃会(ねはんえ)など)。一方,スリランカやミャンマー,タイなど南方仏教の諸国では,これらはいずれもインド暦で第2月とされるバイシャーカvaiśākha月の満月の日のこととされ,毎年,この日にあたる5月末から6月初めの満月の日を中心に,盛大な祭りが行われる。…

【法会】より

…日本では598年(推古6)4月に聖徳太子が,諸王・豪族を集めて法華・勝鬘(しようまん)の2経の講義を行ったことが知られ,仏教の興隆流布とともに各種の法会が催された。経論の主旨を究明しようとした維摩(ゆいま)会最勝会,唯識会,俱舎(くしや)会,華厳会,法華会をはじめ,国家の安泰を祈る仁王(にんのう)会,大般若会や,釈迦の入滅を追慕し報恩の意を表す涅槃(ねはん)会は,やがて一宗一寺の祖師信仰と結びついて,祖師の御影(みえ)像や堂を造って忌日に法事を行うにいたった。中世には祖先の追善冥福を祈る法会も一般化し,ときに斎(とき)(食事)の席を設けるなどして今日に至っている。…

※「涅槃会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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