改訂新版 世界大百科事典 「減租減息」の意味・わかりやすい解説
減租減息 (げんそげんそく)
jiǎn zū jiǎn xī
高率の小作料(租)と借金利子(息)を軽減させることで,とくに日中戦争期に中国共産党治下の農村で実施された政策をいう。旧中国の農民は封建的地主制のもと,一般に収穫の50%以上,60~70%もまれでない小作料,および月利数割にも達する高利貸により過酷に搾取されていた。中国革命の主目的は地主制を廃し,土地を農民に分配することだったが,この土地革命に先行して地主・小作関係の改革をはかる減租減息が採られた。すなわち国共合作下の国民革命期(1924-27),減租減息を掲げる農民運動が広東省海陸豊地方を中心に繰り広げられ,国民党中央も1926年10月〈二五減租〉(小作料25%引き下げ)を採択した。この政策は国共分裂後も国民政府に受け継がれ,〈中華民国土地法〉(1930年6月)に定められたが,実際には施行されなかった。
一方中国共産党は,江西省瑞金地方はじめ各革命根拠地で土地革命を展開したが,37年7月の日中戦争勃発を前に,今や民族矛盾が主となり国内矛盾は従になったとして抗日民族統一戦線を提唱し,各階層人民を一致団結して抗日に立ち上がらせるため,地主所有地の没収を止め減租減息に転ずることを決定した。減租減息を全面的に規定しているのは〈抗日根拠地の土地政策に関する決定〉(1942年1月)で,基本原則は,地主側が封建的搾取の軽減を実行し,土地・財産の所有権を認められるのに対し,農民側は小作料と利子を確実に地主に納める(交租交息)ことである。具体的には(1)小作料を一律25%引き下げ,最高額を収穫の37.5%に制限する。(2)利子率を年1割ないし1割5分として抗日戦前の旧債を処理し,高利貸を禁ずる。(3)小作料以外の搾取--高い小作保証金,無償労働,飲食物の供応,升の不正使用などを禁ずる,というものである。なお減租減息は,1949年前後の全国的な土地改革の展開に当たり,その前段の準備段階としても広く実施された。
→土地改革 →土地革命戦争
執筆者:川村 嘉夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報