湿舌(読み)シツゼツ

精選版 日本国語大辞典 「湿舌」の意味・読み・例文・類語

しつ‐ぜつ【湿舌】

  1. 〘 名詞 〙 南方から日本列島に舌状の形ではいり込む湿った気流をいう。しばしば大雨を降らせる。〔天気予報論(1946)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「湿舌」の意味・わかりやすい解説

湿舌
しつぜつ

天気図のある面で湿った大気が、ある方向に舌状に伸びている部分。通常、等高度面または等圧面についていう。湿舌は、混合比比湿露点温度、相当温位気温と露点の差など、大気中の水蒸気量または湿潤状態を示す物理量の等値線を引くと、それが舌状となって現れる。850ヘクトパスカル、700ヘクトパスカル面天気図上で湿舌が検出され、その方向に流れる下層ジェット気流を伴うときは、その近傍集中豪雨が降りやすい。なお、乾燥した舌状の部分を、湿舌に対して乾舌ということがある。

[倉嶋 厚]

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改訂新版 世界大百科事典 「湿舌」の意味・わかりやすい解説

湿舌 (しつぜつ)
moist tongue

とくに梅雨期に南方より水蒸気を多く含む暖かい気流体が,天気図上でみると,大気の下層に舌状になって流れこむことがあり,これをさしていう。集中豪雨の可能性予測に重要で,上層に寒気があると不安定になり,大雨が降る。
梅雨
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「湿舌」の意味・わかりやすい解説

湿舌
しつぜつ
moist tongue

比較的乾燥した気団の中に湿った空気楔状に侵入する現象天気図上で湿度分布を描くと,湿った部分が舌のような曲線で描かれるため,湿舌と呼ばれる。特に湿舌が問題になるのは梅雨の時期で,亜熱帯の海上の広い範囲から湿った空気が梅雨前線付近に集められ,九州西方から日本列島に沿って延びる湿舌が形成され,多量の降雨をもたらす。

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百科事典マイペディア 「湿舌」の意味・わかりやすい解説

湿舌【しつぜつ】

梅雨末期などに大雨の降る時の天気図を調べてみると,本州沿いの前線の南側に水蒸気を多量に含んだ気流が舌状に流入している場合が多い。これを湿舌という。
→関連項目集中豪雨

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世界大百科事典(旧版)内の湿舌の言及

【集中豪雨】より

…台風による地形性の大雨などとは異なって,平野部で10~50km2ぐらいの地域に限って被害が出ることが多い。気象学的には,北から南下した上空の寒気の下に南からの暖かい湿った空気が流入して(天気図上では湿舌を示す),大気の成層が不安定となって激しい対流が発達したときに起こり,たいていは雷を伴う。小河川のはんらんによる災害も起こるが,もっとも恐ろしいのは,山すそなどでの鉄砲水や山腹崩壊,土石流などによる被害である。…

【日本列島】より

…6月末から7月半ばごろにかけては,梅雨前線が本州を横切ったり日本海岸沿いに走るようになり,梅雨末期の集中豪雨のシーズンとなる。暖湿な空気が舌のような形(湿舌(しつぜつ))で前線に流れ込むと集中豪雨が降りやすくなる。一方,梅雨型の気圧配置が長く続くと,オホーツク海高気圧から吹いてくる北東の冷湿風(〈やませ〉という)が東北地方を中心に流れ込み,冷害のおそれがでてくる。…

【梅雨】より


[集中豪雨]
 梅雨末期(6月末~7月上旬)の集中豪雨は次の理由で起こる。下層の700~800hPa(高度3000m以下)に下層ジェットという強風域が舌状に南西から侵入し(これを湿舌と呼ぶ),これが高温多湿であり,水分を十分日本に運ぶ役目をする。しかるに上層5000m以上では,北西風が冷涼な乾いた空気を運んでくる。…

※「湿舌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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