水蒸気を含んでいない空気粒子を断熱的に標準気圧(1000ヘクトパスカル)までもってきたとき、その空気粒子が示す温度をいう。初めの温度(絶対温度)をT、気圧をpとすれば、温位θは次の式で定義される。
θ=T(1000/p)0.29
この式から、断熱変化においては温位が変わらないこと、すなわち温位に保存性があることが示される。熱力学の第一法則から、空気粒子に加えられた熱量は、一部は内部エネルギーの増加(温度の上昇)に使われ、一部は外圧に抗して膨張する仕事に使われる。一方、気体の法則から、気圧、気温および比容の間には一定の関係がある。いま、空気粒子を断熱的に気圧の低い所にもってくると、空気粒子は膨張するが、それに必要なエネルギーは断熱的であるために、内部エネルギーによってあがなわれ、その分だけ空気粒子の温度は低下する。反対に、空気粒子を気圧の高い所へもってくると、その温度は上昇する。このように空気粒子の運動によってその温度は変化するので、保存性がない。しかし、温位を用いると空気の運動が断熱的である限り、保存性がある。このため温位は気団の解析や前線の検出などに利用される。実際の空気には水蒸気が含まれており、凝結に際して潜熱の放出があるため、この影響を考慮した相当温位が用いられる。相当温位は湿潤断熱変化に対して保存性がある。そのため、高温多湿な気団の解析や梅雨前線(前線を境に東日本では気温差が大きく、西日本では湿度差が大きい)の検出には相当温位がきわめて有効である。
[股野宏志]
『小倉義光著『総観気象学入門』(2000・東京大学出版会)』
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…空気を理想気体とみなし,初期状態の気温(絶対温度,以下同じ)をT,気圧をp,最終状態の気温をT0,気圧をp0とすれば,この断熱変化にはポアソンの式と呼ばれるの関係がある。p0=1000hPaとしたときの温度T0を温位(ポテンシャル温度)と呼び,断熱変化に対して変化しないため,上層の気温と下層の気温を比較する場合などに使われる(乾燥空気では(γ-1)/γは約0.286となる)。 乾燥空気が断熱変化しながら上昇するとき,100mごとに約1℃気温が低下する(この値を乾燥断熱減率という)。…
※「温位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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