陸上の地形がもとの起伏を保ったまま,水面下に沈むことを溺れるとか沈水するとかいう。陸上の谷地形が陸地の沈降や海面あるいは湖面の上昇により沈水すると,もとの尾根は岬や島となり,もとの谷に沿った部分は海や湖が浸入して入江となる。こうしてできた入江を溺れ谷という。陸上にあったときの谷の成因によって,河食谷が溺れた場合をリアス海岸,氷食谷が溺れた場合をフィヨルドという。約1万5000年前から約5000年前にかけての後氷期には,約100mにもおよぶ海面上昇のために世界の多くの海岸では河谷や氷食谷の下流部が溺れ谷となった。日本の多くの海岸でも縄文時代の海進により,現在の河谷沿いに多くの溺れ谷ができた。その後,河川上流からの土砂の供給が豊富なところや海岸での浸食・堆積作用が活発な所では,溺れ谷は徐々に埋まり三角州や海岸平野などの沖積低地となった。硬い岩石からなり堆積作用が弱い溺れ谷は現在でも水域のまま保たれてエスチュアリー,リアス海岸,フィヨルドなどの形態を残している。
執筆者:米倉 伸之
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もとは陸上にあって谷をなしていた部分の土地が、地盤の沈降または海水面の上昇などの原因によって海面下に没し、湾となった地形。沈水海岸線の代表例としてあげられるリアス海岸にみられる。沈水以前の谷は入り江となり、尾根は岬となって残る。深く刻まれた谷が大きく沈水した場合には、溺れ谷の延長部にあたる浅海底にも古い河谷地形が認められ、陸棚谷(りくほうこく)とよばれる。
一般に海岸付近の斜面は急で、山地が直接海に迫っている。岬の部分では波が収斂(しゅうれん)し、入り江の部分で発散するので、波の強さに場所的差違を生じ、岬は侵食を受けて後退し、入り江では堆積(たいせき)傾向が卓越し、構成岩石が軟らかい新世代の地層からなる海岸では、しだいに海岸線の出入りは少なく平滑となる。
[髙山茂美]
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