泉鏡花の初期の短編小説『義血侠血(ぎけつきょうけつ)』をもとにした新派戯曲。原作は1894年(明治27)11月『読売新聞』に「なにがし」の署名で連載。翌年12月、東京・浅草座で川上音二郎一座が根本凌波・広岡柳香の脚色により『滝の白糸』の外題(げだい)で初演。以後この外題が踏襲されている。金沢の水芸の太夫(たゆう)、滝の白糸は、馬丁をしていた村越欣弥(むらこしきんや)と知り合い、学資を送り続けるが、金の調達に困り、ようやく得た300円を強奪されて錯乱し、強盗殺人を犯す。法廷で対面した検事は、3年間1日も忘れたことのない欣弥その人だった。白糸は欣弥の説得に、否定していた罪を認めて自らの命を絶ち、欣弥も自殺する。初演の白糸は藤沢浅二郎(川上の欣弥)で、その後喜多村緑郎(きたむらろくろう)や河合武雄(かわいたけお)が演じ、脚本も種々あるが、1933年(昭和8)8月、東京劇場で花柳(はなやぎ)章太郎が初役で演じるに際し、初めて水芸の舞台面を取り入れ、以後これが一つの見せ場になっている。溝口健二監督、入江たか子・岡田時彦主演の映画化(1933)は、サイレント映画の傑作として有名。
[土岐迪子]
『『義血侠血』(『明治文学全集21 泉鏡花集』所収・1966・筑摩書房)』
…90年小説家たらんとして上京,91年尾崎紅葉の門人となる。93年京都《日出新聞》に《冠弥左衛門》を,94年には《読売新聞》に《義血俠血》(上演名《滝の白糸》)を連載,95年《夜行巡査》《外科室》を当時最大の文芸誌の一つであった《文芸俱楽部》に発表するに及んで観念小説と名づけられ,新進作家として脚光をあびる。この間94年には父清次が死去,祖母や弟をかかえて生活苦を味わう。…
…その仕掛けは,多くは細い管をどこかに配してあるといった単純なものであるが,その華麗な舞台面から,主として女芸人のものとなり,明治末から昭和にかけて奇術の女王と称された松旭斎天勝(しようきよくさいてんかつ)も得意とした。また,泉鏡花の《滝の白糸》(《義血俠血》)は,水芸の太夫白糸を主人公としている。【織田 紘二】。…
※「滝の白糸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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