漁業と気象との関係を調査研究する分野であるが、漁船の安全のための気象通報を含める。
水産生物、主として魚類の生態とそれを取り巻く環境条件、水温、塩分、密度、流れ、透明度、濁度、溶存酸素量、栄養塩類などとの関係を調査する。これらのうち主分野をとくに水産気象とよぶことがある。たとえば、海洋の魚類にはその成育に適する水温があり、日本近海のように寒流と暖流とが複雑に交錯する所では、海水温の分布によって、主要な魚類の生息範囲を知ることができる。このため海水温の分布図を気象庁は漁船に通報している。
気象の状態が漁獲量に大きな影響を与える。たとえば低気圧の通過とブリの漁獲量との間には密接な関係があり、低気圧の通過直後からその量が増大することが多い。これは、低気圧の通過による海面の攪拌(かくはん)が濁りを増すためといわれている。また大規模な現象としては、貿易風の消長がペルー沖の海水温の上昇を促し、エルニーニョ現象をおこして、カタクチイワシの漁獲量に大きな打撃を与えることがある。
また低気圧や台風の通過が、漁船の海難を引き起こすので、気象庁では操業中の漁船に気象の実況、高低気圧や前線の位置と動向を知らせる漁業気象通報などを実施している。そのほか外洋や沿岸の波浪図や、冬季間に北洋へ出漁する船舶には海氷図なども無線模写通報によって通報して海難の防止に努めている。
[安藤隆夫]
漁業には海象だけでなく,気象も大きく影響する。暴風にあえば遭難するおそれもあり,冬季北日本の海上では,船体着氷によって転覆することもあり,流氷も危険である。また,魚のとれぐあいも気象の影響を受ける。このような漁業に関連する気象が漁業気象である。なお,漁船のために1日に3回NHKから漁業気象通報が放送されており,登山家,一般の人々にも利用されている。
執筆者:高橋 浩一郎
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