禿百姓とも書き,江戸時代,年貢の未進や負債の累積などにより破産した百姓をいう。年貢諸役の過重取立て,商品経済の農村への浸透などによって農村が疲弊し,災害・凶作・飢饉などを契機にして潰百姓が激増した。潰百姓の跡地(あとち)は親類,縁者,誼(よしみ)の者が引き請けるものとされていたが,引請人のいない場合が多く,それが村の惣作地(村総作)となった。惣作地については〈村並年貢諸役相務め,作徳の内種肥代を渡し,其余分は地頭へ納め,作手間は村役にいたす定法〉(《地方凡例録》)とされ,耕作および年貢諸役を村が負わされていたが,潰百姓の跡地の多くは耕作放棄され,手余地(てあまりち)となった。とくに中期以降,潰百姓が続出して手余地が増加し,貢租収入の減少をもたらし,他方,彼らが離村して博徒,無宿(むしゆく)者,都市細民などに化し,これが治安上の問題ともなり,政治問題化した。その対策が幕政改革の課題の一つとなり,人返し(ひとがえし)の令が出されたが実効を収めえなかった。
執筆者:葉山 禎作
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… 手余地は近世の全期間を通して各地にみられる。とくに18世紀中ころ以降,商品経済の農村への浸透が年貢の重圧と相まって,中層以下の本百姓経営を解体させ,潰百姓,離村,出稼ぎなどによる耕地の荒廃,地主手作経営での手不足が慢性化し,災害,飢饉などを契機にして手余地が激増した。関東の農村では明和・安永期(1764‐81)から江戸地回り経済と呼ばれる関東在地での農産物商品化の動きが一段と進行し,商品経済の農村浸透,上層農民の地主化・在郷(ざいごう)商人化がすすみ,これに対応して中層以下の潰百姓の増加,出稼・離村の激化が顕著になった。…
※「潰百姓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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