日本大百科全書(ニッポニカ) 「災害時応援協定」の意味・わかりやすい解説
災害時応援協定
さいがいじおうえんきょうてい
大規模災害に備え、行政と行政、行政と民間、民間と民間などが結ぶ人的・物的支援の協定。災害協定、災害支援協定、災害協力協定などさまざまな呼び方がある。1995年(平成7)の阪神・淡路大震災の際、救命・救助・消防活動の遅滞、ライフライン・交通・通信機能の寸断途絶、病院・学校・警察・役所など公共施設の損壊により救援活動が著しく低下した教訓から、数多くの協定が結ばれるようになった。多くの協定が相互・包括応援の形をとっている。内容は、災害に備えた水・食料・日用品・医療物資などの備蓄、行政データの相互保管、救命・救助・捜索、消防隊・警察官・医師の派遣、輸送用車両・船舶・重機の提供、食料品・飲料水・日用品・医療品の供給、医療活動、遺体の収容・葬儀、帰宅困難者への支援、電気・ガス・水道・道路・鉄道・通信機能の復旧、被災者情報の提供、被災者の受け入れ、復興行政事務の代行など多岐にわたる。協定は被災自治体の要請で発動されていたが、行政機能がまひした被災自治体が多く出た2011年(平成23)の東日本大震災の反省から、被災自治体の要請を待たず、応援自治体が独自判断で支援に向かえるよう改正した災害対策基本法が2013年に施行された。また、応援にかかった費用を一時的に国が立て替える制度も創設された。
行政どうしの協定では、地方自治体相互の協定が全国規模で締結されている。東日本大震災時に、被災3県について、「大阪府・和歌山県連合」が岩手県を、「兵庫・鳥取・徳島県連合」が宮城県を、「滋賀県・京都府連合」が福島県をというように、担当する府県を割り当てる「カウンターパート方式」で支援した関西広域連合の応援協定が大きな成果をあげたことから、遠隔地の自治体どうしが協定を結ぶ事例が増えている。大規模災害時には全国知事会が支援態勢づくりを主導する。また全国の消防応援の仕組みとして、緊急消防援助隊の制度がある。
行政と民間企業の間では、地方自治体と食品、コンビニエンス・ストア、ファストフード、スーパーマーケット、百貨店、医薬品、鉄道、トラック運送、フェリー、電力、ガス、病院・医療機関、葬儀、重機、建設・土木、屎尿(しにょう)処理、電気通信、金融機関など多様な業種で協定が結ばれている。いずれも行政機関にはない専門的技術・人材・物資の提供を受け、救命・救助活動や復旧・復興活動を迅速に進めようというねらいがある。
[編集部]