炭酸アンモニウム(読み)タンサンアンモニウム(その他表記)ammonium carbonate

デジタル大辞泉 「炭酸アンモニウム」の意味・読み・例文・類語

たんさん‐アンモニウム【炭酸アンモニウム】

炭酸アンモニウム塩白色光沢のある結晶。水によく溶け、分析試薬・医薬品などに用いる。化学式(NH42CO3

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「炭酸アンモニウム」の意味・読み・例文・類語

たんさん‐アンモニウム【炭酸アンモニウム】

  1. 〘 名詞 〙 ( アンモニウムは[ラテン語] ammonium ) 化学式 (NH4)2CO3・H2O 無色の結晶だが、空気中ではアンモニアを放出して炭酸水素アンモニウムになる。分析用試薬、医薬品に利用。炭安

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「炭酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸アンモニウム (たんさんアンモニウム)
ammonium carbonate

化学式(NH42CO3。1水和物(NH42CO3・H2Oのみが知られ,無水和物は得られていない。市販の炭酸アンモニウム(俗に炭安という)は,炭酸水素アンモニウムNH4HCO3カルバミン酸アンモニウムNH4OOCNH2との混合物または複塩で,炭酸カルシウム硫酸アンモニウムの混合物を加熱し,昇華物として得られる弱いアンモニア臭のある白色の塊。これを濃アンモニア水に溶かし,冷所に数日放置すると,1水和物の無色透明の光沢ある斜方晶系結晶が析出する。15℃で水100gに100g溶ける。濃アンモニア水,エチルアルコール,二硫化炭素に不溶。空気中に放置すると,常温で徐々にアンモニアを放って炭酸水素アンモニウムに変化する。加熱すると,固体は58℃,水溶液は70℃で分解して,アンモニアと二酸化炭素と水とに変化する。市販の炭酸アンモニウムは加熱により昇華する。水100gへの溶解度25g(15℃),67g(65℃)。沈殿試薬として用いるときには,市販品をアンモニア水(6mol/dm3)に溶かし,(NH42CO3水溶液として使用する。分析試薬,各種アンモニウム塩の原料羊毛洗浄剤染色媒染剤,医薬品(NH4HCO3・NH4OOCNH2で,胃酸過多と頭痛併発時の内服薬)として用いる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

化学辞典 第2版 「炭酸アンモニウム」の解説

炭酸アンモニウム
タンサンアンモニウム
ammonium carbonate

(NH4)2CO3・H2O(114.10).炭酸カルシウムと硫酸アンモニウムの混合物を加熱昇華させたものを濃アンモニア水に溶かして冷却すると,一水和物が得られる.無水物は得られていない.アンモニア臭をもつ無色の結晶.58 ℃ で分解してアンモニアと二酸化炭素と水になる.空気中でも不安定で,徐々に分解して炭酸水素アンモニウムとアンモニアと二酸化炭素になる.冷水にはよく溶けるが,熱水では分解してアンモニアと二酸化炭素と水になる.他のアンモニウム塩の製造原料,分析用試薬,ベーキングパウダー,発泡剤,医薬品(制酸剤,気付薬),接着剤(カゼインの可溶化剤)などとして用いられる.[CAS 506-87-6:(NH4)2CO3][CAS 10361-29-2:(NH4)2CO3・H2O]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「炭酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸アンモニウム
たんさんあんもにうむ
ammonium carbonate

炭酸のアンモニウム塩で、一水和物(NH4)2CO3・H2O 式量114.1のみが知られており、無水和物は得られていない。炭安とよばれる市販品は、炭酸カルシウムと硫酸アンモニウムの混合物の加熱、昇華により製造されたもので、炭酸水素アンモニウムNH4HCO3とカルバミン酸アンモニウムNH4CO2NH2の複塩あるいは混合物である(白色塊状)。これを濃アンモニア水に溶かして冷所に数日放置すると、炭酸アンモニウムの一水和物が得られる。光沢のある無色の斜方晶系微結晶。水によく溶ける(15℃の水100グラムに100グラム)が、エタノール(エチルアルコール)、二硫化炭素には溶けない。空気中に放置するとアンモニアを発生しながら徐々に炭酸水素アンモニウムに変わる。固体は58℃で、水溶液は70℃でアンモニア、水、二酸化炭素に分解する。各種アンモニウム塩の製造原料、分析用試薬となるほか、制酸剤など医薬品としても用いられる。

[鳥居泰男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「炭酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸アンモニウム【たんさんアンモニウム】

化学式は(NH42CO3・H2O。この1水和物のみが知られる。俗に炭安とも。水によく溶ける無色結晶。空気中で不安定でアンモニアを放ち徐々に炭酸水素アンモニウム(NH4)HCO3となる。熱すると固体は58℃,水溶液は70℃でアンモニアと炭酸ガスとに分解する。市販の炭安は普通炭酸水素アンモニウムとカルバミン酸アンモニウムNH2COONH4との複塩。水溶液として使用。試薬,医薬品,媒染剤。
→関連項目石灰窒素発泡剤

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「炭酸アンモニウム」の意味・わかりやすい解説

炭酸アンモニウム
たんさんアンモニウム
ammonium carbonate

市販品は炭酸水素アンモニウム NH4HCO3 とカルバミン酸アンモニウム NH2COONH4 との混合物で,白色塊状物質である。これを飽和アンモニア水に溶かし放置すると,1水塩 (NH4)2CO3・H2O が析出する。1水塩は無色透明の稜状晶ないし板状晶で,空気中に放置すると徐々に炭酸水素アンモニウムに変る。約 60℃で気化。4容の水に徐々に溶けるが,熱水によって分解する。ベーキングパウダー,毛織物類の洗浄と脱脂,媒染剤,分析試薬などとして用いられるほか,消火剤,気つけ薬などの用途もある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android