翻訳|lava flow
溶岩が地表で液体として流動すると溶岩流と呼ばれる。またそれが冷却・固化して生じた岩体もやはり溶岩流と呼ばれる。実測される溶岩流の温度は玄武岩質のもので1050~1200℃くらい,安山岩質のもので1000~1100℃くらいの範囲である。粘性率は102~107ポアズであるが,冷却するにつれ急激に増加し1010~1011ポアズで事実上固化する。流下速度は急斜面を流れる玄武岩質溶岩流の場合で最高10m/s以上に達するが,通常は人の歩く速さか,それ以下の場合が多い。溶岩流の規模は長さ数km,体積1km3以下のものが多いが,大型のものは長さ,体積ともその10倍以上のものもある。デカン高原やコロンビア高原の溶岩台地では最大数百km3,長さ300km以上の玄武岩質溶岩流がみられる。固化した溶岩流の形態は次の3種に分類される。(1)パホイホイpahoehoe溶岩 玄武岩質溶岩流に限られ,表面が平滑で扁平な袋状ないし板状の外形を示す。厚さ数十cm~2mくらいで,波のようなうねり,縄状,ろうそくの滴状などさまざまのバリエーションがある。水平的広がりに対して厚さが薄く,含まれる気泡は球状のものが多く,粘性が低かったことを示す。溶岩チューブや溶岩トンネルが発達することがある。(2)アアaa溶岩 パホイホイとともにハワイの火山の溶岩流につけられたポリネシア語であるが,学術語として定着している。玄武岩質ないし安山岩質溶岩流にみられ,粗い刺の密集した,細かい凹凸に富んだ表面をもつ。また直径数cmくらいの多量の団塊clinkerが表面を覆ってしまう場合が多い。アア溶岩の表面はこのため,多孔質で砕けやすく,気泡は楕円形や変形したものが多い。しかし中心部は高温で連続した液状部があり,溶岩流全体の前進は,中心部の流動によって支配される。厚さは1~20mの場合が多く,パホイホイ溶岩と比べて水平的広がりに対し厚さが大きい。(3)塊状block溶岩 安山岩質・デイサイト質・流紋岩質溶岩流に特徴的で,表面は径数十cm~数mの岩塊の集合で覆われている。厚さは10m以上のものが多く,100m以上の厚さのものもまれではない。日本でみられる溶岩流の大部分がこれで,浅間山の鬼押出し,桜島の大正溶岩などがよい例である。中心部はアア溶岩と同様連続した流動層からなり,ゆっくり前進する溶岩流の先端部は岩塊として崩れ落ち,中心部はその上に乗って前進して行く。
溶岩流は常に谷のような地形の低い所を選んで流下するため,舌状の平面形をとることが多い。平坦地では扇状地状に広がるが,そのときは溶岩流の中に樹枝状の流路が生じ,新鮮な溶岩が先端部へ補給されるようになる。固結した溶岩の断面にはしばしば多角柱状の冷却割れ目がみられ,柱状節理columnar jointと呼ばれる。溶岩が水底に噴出すると,水により急冷・破砕され,細粒岩片の集合体(ハイアロクラスタイト)になることが多いが,とくに高温の玄武岩質溶岩の場合は,楕円体の袋や筒の集合体からなる枕状溶岩が生じる。
→火山
執筆者:荒牧 重雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…ふつうは比高200~300m程度以下で,頂上には比較的大きな火口がある。溶岩が流出する噴火では,噴出口から溶岩流lava flowが出て固まった軽微なものもあり,溶岩の粘性が大きければ噴出口の上に高く盛り上がって円い丘をつくる。これを溶岩円頂丘lava domeという。…
…この規模の噴火では,圧力は2000~500気圧,1回の放出物の量は1×105~4×105tになる。【下鶴 大輔】
【火山放出物】
火山から放出される物質は大別して,火山ガス,温泉水,溶岩流,火山砕屑物(火砕物)などがある。火山ガスの大部分は水蒸気であるが,その大部分は地表水が地下でマグマにより熱せられて気化したものである可能性がある。…
※「溶岩流」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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