デジタル大辞泉
「枕状溶岩」の意味・読み・例文・類語
まくらじょう‐ようがん〔まくらジヤウ‐〕【枕状溶岩】
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まくらじょう‐ようがんまくらジャウ‥【枕状溶岩】
- 〘 名詞 〙 枕のような塊が集まってできている溶岩。玄武岩質の溶岩が水中に流出したときに特徴的にできる構造。表面は水と接触して急冷するために、ガラス質となり、内部には放射状のわれめが発達する。俵状溶岩。
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枕状熔岩
一般に長径数cmから数m内外の表面が滑らかな楕円体状の火山岩で,特に塩基性火山岩の塊が多数重なり合って集合したもの.個々の形は様々で楕円体の表面は滑らかなものが多く,しばしば切り口では放射状の割れ目が見られる.岩質は様々であるが,一般には玄武岩質あるいは輝緑岩質のものが主で,一部にはスピライト化作用を受けたものも少なくない.代表的なものにはオフィテイック組織を示すものがあるが,楕円体の周縁部では比較的細粒の玄武岩質かガラス質のものとなる[Dewey & Flett : 1911, Coleman : 1977].
熔岩が小楕円体あるいは小球の集合で枕状構造を作る作用は,玄武岩質熔岩が流動する際に小団塊に分れ,この小団塊が密に集合して固結する時に生じる.この名称は枕を乱雑に積み重ねた状態に類似している構造をもっている熔岩として命名された.枕状熔岩は地向斜堆積物に伴われることが多く,一般に水底の噴出か水中に流入したことを表わしている.熔岩が舌のように出て膨れ枕程度の大きさになると,その前に細粒またはガラス質の殻が発達してそれ以上の成長を阻害するために枕が形成される.この時期では枕はまだ塑性を保っており,初期の枕によって枕の下面が凹むが,上面は後からの枕で覆われる以前に硬くなる.この形状から古い枕の上下を判別できる[Dewey & Flett : 1911, Coleman : 1 977].枕状熔岩の個々の枕が,断面ではほぼ円形に近く,中心から放射状の割れ目が入っている場合に,俵を横から見たように見えるので俵状熔岩ともいう.枕状熔岩は1854年にナウマンによってサクソニイのものが報告されて以来,多くの人によって論ぜられていた[Naumann : 1854].様々な説があったが,一般には海底に熔岩が噴出し,流動性に富む熔岩流が急冷してちぎれ,個々に楕円体状となって固結したものと考えられていた[鈴木 : 1954].その後実際に熔岩が海中に流れ込み急冷した様子が海中で撮影され,海中で急冷して枕状の構造が形成されることが確認された[Moore : 1975].
日本では徳重が佐渡において枕状熔岩の存在を最初に記載した[徳重 : 1934, 1935].その後北海道根室半島の車石の研究があり[八木 : 1948, Yagi : 1950],北海道各地のものの報告が行なわれた[鈴木 : 1951, 1954].現在では日本各地で産出が知られている.
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枕状溶岩 (まくらじょうようがん)
pillow lava
楕円体またはソーセージ状の溶岩塊が重なったもの。俵状溶岩ともいう。個々の塊(枕)は最大径数10cm~数m。枕はガラス質の殻をつけ内部は発泡していたり中空のこともある。断面でみると放射状の割れ目が発達しており,このため車石とも呼ばれる。同心円構造もみられる。枕は大きなすき間があかないように,生成時の塑性変形により上位のものがすき間に垂れ下がり,堆積当時の上下方向を記録している。枕の間は枕と同質細粒のハイアロクラスタイト,泥岩,石灰岩などが埋めている。玄武岩など低粘性溶岩が水底や未固結の堆積物中に流出(貫入)して生ずる。シート状溶岩とともに海洋地殻の第2層(地震波縦波速度が5km/s程度の層)の主要部分をつくっているほか,陸上でもあらゆる地質時代から産出が知られている。
執筆者:中村 一明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
枕状溶岩
まくらじょうようがん
pillow lava
枕や米俵のような丸みを帯びた塊(枕)が積み重なった形状の溶岩。ピローラバ,俵状溶岩ともいう。海底で噴出する玄武岩質の溶岩が水中で急冷,固結することにより生じる。溶岩の表面は水と接触するとガラス質の殻となるが,中にある未固結の溶岩が殻を破って次々と新しい枕をつくり続けることで,高さ数十mの小山が海底で形成される。個々の枕は,大きいもので長さ数m,円形をなす断面は直径約 1mに及ぶ。断面には同心円構造も見られ,中心部からは放射状の割れ目が入り,米俵を横から見たような観を呈する。枕と枕のすきまはハイアロクラスタイト(水冷破砕岩)や石灰岩などが埋めている。おもに中央海嶺の中軸部やホットスポット上の海底火山で見られる。
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枕状溶岩【まくらじょうようがん】
玄武岩質溶岩などで,岩体全体が枕または俵のような形の団塊を積み重ねたような構造のもの。中心部に放射状の節理があるため車石とも呼ばれる。個々の団塊の直径は数十cm〜1m。溶岩が水中を流れたときにできるといわれている。
→関連項目イスア岩体
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出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の枕状溶岩の言及
【溶岩流】より
…固結した溶岩の断面にはしばしば多角柱状の冷却割れ目がみられ,柱状節理columnar jointと呼ばれる。溶岩が水底に噴出すると,水により急冷・破砕され,細粒岩片の集合体(ハイアロクラスタイト)になることが多いが,とくに高温の玄武岩質溶岩の場合は,楕円体の袋や筒の集合体からなる[枕状溶岩]が生じる。[火山]【荒牧 重雄】。…
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