中国の宮廷宴饗楽。名称は《周礼》春官に由来する。諸説あり,狭義には唐代楽曲〈讌楽〉を指し,唐の杜佑の《通典》は唐初の九部伎,十部伎と立坐二部伎の総称として使い,宋の沈括(しんかつ)は西域・インド系の胡楽を含むものだとする。清の凌廷堪(りようていかん)は,南朝の清楽に対して北朝のを燕楽としている。広義には宮廷雅楽に対する俗楽一般を指す概念として用い,漢の相和歌(歌舞大曲),三国・六朝の清商楽などを包括する。ただし隋・唐・宋3代の胡楽と中国俗楽の融合した宮廷楽を指すのが有力である。隋・唐の各部伎(大曲と法曲も含む),さらにそれを継承して作られた宋の新曲および歌舞劇,器楽曲などが入れられる。例えば唐の大曲《霓裳(げいしよう)羽衣曲》は散序(自由節奏,器楽)-中序(有拍歌舞)-破(急拍,舞)の形式であったが,宋では破だけになり,多くの動作とセリフを加え物語性を帯び歌舞劇化した。日本の雅楽の唐楽は唐朝宴楽を受けついだものである。
執筆者:吉川 良和
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中国音楽の種目名。宴楽、宴饗楽(えんきょうがく)ともいう。各時代の俗楽を取り入れた宮廷の饗宴音楽で、内容が一定しないため、雅正の楽である雅楽と狭義には区別される。宴席に用いる民衆の楽として、その名称は遠く周代にもあるが、隋(ずい)・唐の時代より中央アジア、インドの亀茲楽(きじがく)、天竺楽(てんじくがく)など、西域楽(胡楽(こがく))が盛んに到来すると、これとともに国際性豊かな宴饗楽として、宮廷で正式に制定された。唐代末期に西域楽と俗楽は合して新俗楽となり、宋(そう)代にはこれを一般に燕楽とよんだ。日本の雅楽(唐楽)は西域楽を含んだ唐の宴饗楽を天平(てんぴょう)年間(729~749)から輸入し発展させたものといえる。元(げん)代では宴楽と称し、新作が試みられた。
[橋本曜子]
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…新しい楽曲の制定,音律の整理が続けられ,神宗の時,さらに雅楽を改訂して大規模な大晟楽(たいせいがく)を制定した。宋代は宮廷で学者が楽議を論じ,音律を改定し勅撰の楽書を編纂した時代であり,陳暘(ちんよう)の《陳暘楽書》,蔡元定の《燕楽書》《律呂新書》などすぐれた理論書が著された。また初唐以来の宴饗楽や中唐以後に胡楽と俗楽が融合してできた新俗楽を燕楽(宴楽)と称して,明確に雅楽と区別するようになった。…
…中国における韻文文学の様式の一種で,歌辞文芸でもある。もとは唐代における燕楽(宴楽,儀式用の雅楽に対し,宴席などの音楽をいう)の歌辞をいい,それがしだいに伝統的な詩とは違った文学的性格を備え,宋代になって大いに流行した。〈漢文,唐詩,宋詞,元曲〉といわれるように,詞は宋代をもって様式を完成し,この時代の特有な文学としての位置をしめる。…
※「燕楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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