爆発物の使用,製造,輸入,所持等を取り締まる刑罰法規。明治10年代の過激な自由民権運動においてしばしば爆発物が使用されたために,これを鎮圧する目的で1884年太政官布告第32号として制定されたものである。その後,1908年,18年に改正されたが,現在でも法律としての効力を有している。判例によれば,同罰則にいう爆発物とは,その爆発作用そのものによって公共の安全を攪乱し,または,人の身体や財産を傷害・損壊するに足る破壊力を有するものとされ,したがって,火炎瓶(後述)等はこれに含まれないと解されている。同罰則により処罰される行為類型としては,治安を妨げ,または人の身体・財産を害する目的で爆発物を使用し,もしくは人をして使用させる行為(1条,法定刑は,死刑,無期または7年以上の懲役・禁錮)のほか,使用未遂(2条),使用予備(3条),使用の教唆・煽動(4条)等があり,さらに,これらの犯罪が行われることを知りながら,官憲または被害者に告知しない行為(8条)も処罰される。
ガラス瓶その他の容器にガソリン等の引火しやすい物質を入れ,その物質が流出,飛散した場合にこれを燃焼させるための発火装置または点火装置を施したもの(〈火炎びんの使用等の処置に関する法律〉1条)。1951-52年の日本共産党によるいわゆる火炎瓶闘争の際に多用された。当時この火炎瓶が,爆発物取締罰則にいう〈爆発物〉にあたるかが争われたが,判例は,同罰則が違反行為に著しく重い刑罰を定めている点にかんがみれば,〈爆発物〉とは,その爆発作用そのものによって公共の安全または人の身体・財産を害するに足る破壊力を有するものに限るとして否定的判断を示した。その後,1970年前後の学生運動の過激化に伴い,火炎瓶が多用されたため,これに対処する目的で72年に〈火炎びんの使用等の処罰に関する法律〉が制定された。同法によれば,火炎瓶を使用して人の生命,身体または財産に危険を生じさせた者は7年以下の懲役(2条1項),火炎瓶を製造または所持した者は3年以下の懲役または10万円以下の罰金(3条1項)に処せられる。
執筆者:西田 典之
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治安妨害や人の身体・財産を害する目的での爆発物使用等について、処罰を定めた刑法付属法規。1884年(明治17)の太政官(だじょうかん)告示第32号によるが、現在は法律としての効力を有している。第1条は、上記の目的で爆発物を使用した者および人に使用させた者を、死刑または無期もしくは7年以上の懲役・禁錮に処すと定め、その未遂は、第2条により、無期もしくは5年以上の懲役または禁錮に処される。また、上記の目的で製造・輸入・所持・注文をした者や、第1条の罪を犯そうとして脅迫・教唆・扇動・共謀にとどまった者は3年以上10年以下の懲役または禁錮に処される(3条、4条)。本法は、2001年(平成13)の改正により、「テロリストによる爆弾使用の防止に関する国際条約」の効力発生とともに、国外犯についても適用されることとなった。
なお、火炎びんはこの法律にいう爆発物にあたらないとされて、1972年(昭和47)に「火炎びんの使用等の処罰に関する法律」が制定された。
[阿部泰隆]
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…事件自体は,焦燥感にかられた少数壮士の農民から遊離した挙兵であった。しかし,〈政府転覆〉と〈革命〉を公然と主張したこと,爆弾を使用したことに政府は衝撃をうけ,1884年10月にかけて関東各地の自由党員を拘引するとともに,12月爆発物取締罰則を定めて弾圧を強めた。一方,自由党中央はこの事件を〈軽挙暴動〉と批判しつつ,急速に解党へと向かった。…
※「爆発物取締罰則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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