裁判所法に基づき、最高裁が必要と認めた場合に裁判所外で法廷を開くことができる。ハンセン病患者の裁判では、隔離先の療養所や専用の刑事施設に設けられ、1948~72年に95件が開かれた。最高裁は2016年、設置手続きが差別的で裁判所法違反だったと認めて謝罪したが、違憲とは言明しなかった。一方、最高裁の有識者委員会は、憲法の平等原則に違反し、裁判の公開にも反した疑いがあると指摘した。
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出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報
本来開かれるべき裁判所またはその支部以外の場所で開かれる法廷。裁判の法廷は、裁判所または支部で開かれることになっている(裁判所法69条1項)。しかし、この例外として、最高裁判所は、必要と認めるときは、他の場所で法廷を開き、またはその指定する他の場所で下級裁判所に法廷を開かせることができる(同法69条2項)。最高裁判所が必要と認めるときとは、一般的に大災害などで裁判所の法廷が損壊したことなどにより裁判を法廷で実施できない場合のほか、たとえば当事者が長期療養を要する伝染性疾患の患者であって、裁判所に出頭を求めて審理することが不可能ないし不相当な場合など、真にやむをえない場合に限られる。
1948年(昭和23)以降、裁判所以外の開廷場所指定のなかで非常に高い認可率であったのはハンセン病を理由とするものである。ハンセン病患者が裁判を受けた際、最高裁判所が特別法廷(療養所・刑務所・拘置所などにおける法廷)の設置を裁判所法69条2項の規定に基づいて許した事案が数多くみられた。また、ハンセン病患者がこのような裁判を非公開で受けた事件も多かったようであり、憲法が保障する裁判の公開(憲法82条1項)の原則に反すると指摘する識者もいる。このような状況のなかで、最高裁判所は、2016年(平成28)4月にこの問題の検証結果を「ハンセン病を理由とする開廷場所指定に関する調査報告書」として公表した。これによれば、1948年から1972年までの間にハンセン病を理由とする裁判所以外の開廷場所の指定は95件(96件の指定上申があり、その内1件は撤回)とされており、開廷場所としては、ハンセン病療養所、医療刑務支所等の刑事収容施設などが指定されていた。最高裁判所裁判官会議から専決権限を付与された事務総局は、当事者がハンセン病に罹患していることが確認できれば、科学的知見や諸事情(当事者の病状の程度や他者への伝染可能性の有無・程度、伝染予防の措置をとることが可能か否か、将来における病状の改善や伝染可能性の低下の見込みの有無等)を具体的に検討することなく、裁判所外における開廷の必要性を認定して、開廷場所の指定を行うとの定型的な運用を行っていた。この問題について、最高裁判所は、前記報告書の公表と同日に発表された最高裁判所裁判官会議談話により、ハンセン病元患者に対して、このような開廷場所の指定についての差別的な姿勢を認め、謝罪した。
[加藤哲夫 2017年1月19日]
(2016-4-1)
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