1年のうち,ある特定の日に,その前後の日と比べ,偶然とは思われないほど多く,ある気象状態が現れる現象,あるいはその日のこと。たとえば11月3日文化の日は,もとは明治節であり,〈明治天皇の誕生日だから晴れる〉といわれたが,事実,統計をとってみると,この日は移動性高気圧におおわれ,晴れることが多い。これが特異日の一例である。この現象は1930年代にドイツのシュマウスA.Schmaussが研究し,中には偶然に現れ特別の意味のないものもあるが,少なくともいくつかは統計的に有意性が高いことを確かめた。そして,これをSingularität,英語ではsingularityと名付けた。日本では,もとはこれを異常日といった。日本でも古くから寒の戻り,八十八夜(5月2~3日ころ)の別れ霜など,このような日があることは気づかれていた。表にあげたものは,おもな特異日の例である。このような特異日が現れる理由は,必ずしも明らかではないが,大気の大きな流れが,季節変化により,ある特別の日に急に変わることによって生ずるものらしい。このため非常に離れた地域で,天気の種類は違っても同じ日に特異日が現れることがある。たとえば6月28日または29日は,本州では大雨が降りやすいが,北海道では晴れることが多い。また,1年の季節変化もある特定の日またはその前後に急に変わることが多い。たとえば,9月10日ころは夏の終りであり,この日をすぎると急に気温が下がり,雨がちの天気となることが多い。これは大陸が冷え,寒気が南東に流れ出すようになり,その前面の前線帯が日本列島を通るためと見られる。このような見方から分けた季節を自然季節とよんでいる。この季節の区分は地域によって違う。広い意味では,この種の急に季節の変わる日も特異日といえる。特異日は,毎年同じ日またはそのごく近くに現れるので,行事などを計画する時には,非常に参考になる。1964年,日本でオリンピックを開催したおり,長年の気象統計をもとにし,10月10日には秋の長雨が終わることが多いことから,この日を開会日とし,成功した。
執筆者:高橋 浩一郎
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ある気象状態が、前後の日に比べてひときわ多く現れた実績のある日をいう。たとえば東京において11月3日は、前後の日に比べ、過去において晴れの出現した率が高く、雨の出現した率が低いという統計結果がある。このような場合に、東京の11月3日は晴れの特異日である、というようにいっている。その日が特異日であるからといって、毎年同じ天気になるというわけではない。東京の11月3日が雨となることはある。
災害に結び付く特異日現象もある。8月初め、8月末、9月なかば、9月末には、台風が日本に接近しやすい何日間かがある。毎年その時期に台風が来襲すると限ったわけではないにしても、注意すべき時期である。また関東の場合、4月早々に高温となった直後に低温が戻るという特異日がある。4月6日がその低温の特異日とされ、霜に注意したほうがよいとされている。
特異日がなぜ現れるのかを十分に説明することはできないが、気圧配置が特異日のころに、ある特定の癖を出しやすいのであろう、と考えられている。
[平塚和夫]
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(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)
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