犬も歩けば棒に当たる(読み)いぬもあるけばぼうにあたる

ことわざを知る辞典「犬も歩けば棒に当たる」の解説

犬も歩けば棒に当たる

労をいとわず動きまわるうちに思いがけない幸運に遭うことのたとえ。また、物事を積極的に行う者は、それだけ災難に遭うことも多いというたとえ。

[使用例] 半七の報告を聴いて、親分の吉五郎は金杉の浜でをつかまえたほどに驚いた。「犬もあるけば棒にあたると言うが、手前もうろうろしているうちに、ど偉いことをしやがったな。〈略〉いい、いい、なにしろ大出来だ、〈略〉てめえの働きはみんな旦那方に申し立ててやるからそう思え」[岡本綺堂*半七捕物帳―石灯籠|1923~25]

[使用例] 帰り道、親指を立てて車を拾ったら、女に振られてピクニック行きがふいになった、と憤まんやるかたない若い将校が百名村まで乗せてくれ、降りぎわにフライドチキンの大きな包みをポイと手渡してくれました。犬も歩けば、というけれど、栄子が腹減りゃ、天から揚げ鶏が降ってくるといったところでしょうか。[上原栄子*辻の華・戦後篇|1989]

[解説] 江戸いろはかるたの冒頭の句としてよく知られています。ことわざの意味は、古くから幸運に遭うとするものと災難に遭うとするものの二通りの解釈がありました。文字どおりには後者となり、幸運に結びつく要素は皆無のようですが、用例の大半は思いがけない幸運に出会う文脈で用いられています。このような解釈は、みずからを卑下して「犬」になぞらえ、幸運にであったことを意識的に「棒に当たる」と逆の語で表現し、文全体を逆説とすることによって、はじめて可能となります。このひねりの利いた文句をいろはかるたの「い」に選んだ根底には、自らをつまらぬ者といい、好きなものやすばらしいものを「にくい」という江戸っ子にかまえた言語感覚と逆境にめげない心意気があったといえるでしょう。

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デジタル大辞泉「犬も歩けば棒に当たる」の解説

いぬあるけばぼうたる

何かをしようとすれば、何かと災難に遭うことも多いというたとえ。
出歩けば思わぬ幸運に出会うことのたとえ。
[類語](1一口物ひとくちものに頰を焼く/(2棚から牡丹餅ぼたもち開いた口へ餅黄金こがねの釜を掘り出したよう福徳の三年目埋もれ木に花が咲く

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の犬も歩けば棒に当たるの言及

【ことわざ(諺)】より

… 個々の諺の意味については古来から議論が多い。たとえば,〈犬も歩けば棒に当たる〉という諺は,すでに江戸時代において,思いがけず禍に出会う意と,幸いに出会う意の両様に解釈されていた。このような意味の多様性は,(2)の人生の機微を伝える教訓的な諺に多く,逆に諺の魅力ともなっている。…

※「犬も歩けば棒に当たる」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報

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