独断論(読み)ドクダンロン(その他表記)dogmatism 英語

デジタル大辞泉 「独断論」の意味・読み・例文・類語

どくだん‐ろん【独断論】

勝手に決めた原理から結論を導くやり方。また、自分勝手な主張
ある言説を、不完全な点や誤りがあるかもしれないという検討を加えずに真理として主張する態度教条主義
なんらかの教説を積極的に主張する立場
カント哲学で、可能的経験領域においてのみ妥当する概念形而上学的対象にも適用する立場。

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精選版 日本国語大辞典 「独断論」の意味・読み・例文・類語

どくだん‐ろん【独断論】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] dogmatism訳語 )
  2. 一般には確固たる根拠に立たず、また綿密な研究を経ないで、自己だけ正しいとする主張。独断説。⇔懐疑論
    1. [初出の実例]「こは是浮気ものの独断論(ドクダンロン)」(出典当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一四)
  3. カント哲学では、可能的経験の領域においてのみ妥当する概念を形而上学的対象にも適用する立場。独断説。〔普通術語辞彙(1905)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「独断論」の意味・わかりやすい解説

独断論
どくだんろん
dogmatism 英語
Dogmatismus ドイツ語
dogmatisme フランス語

哲学用語。ドグマとは、もともとギリシア原語では意見、定説を意味していて、ギリシアの懐疑論者が、積極的に自然に関して主張する哲学者をドグマティストとよんだのである。中世においては、カトリック教会によって公認され権威づけられた教理がドグマとよばれた。近代に至り、カントが、自らの批判哲学に対して、十分な反省と根拠なしに哲学説を主張する者を独断論者とよんだ。反省というのは、人間が自らの認識能力の限界を見極めることを意味しているから、カントにあっては自らの批判哲学以外の哲学説はみな独断論ということになる。

 また、マルクス主義における、理論を絶対化するいわゆる教条主義もこのドグマティズムの訳であるが、こうした歴史からもわかるように、自分の思い込みだけで特定の説を主張するものを独断論というようになったのである。

[武村泰男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「独断論」の意味・わかりやすい解説

独断論
どくだんろん
dogmatism

ドグマティズムの訳で,教条主義ともいわれる。ドグマに立脚する哲学上,宗教上の立場。一般には自己の説や立場に批判を許さず固執する態度をいうが,このあしき意味はカントがその批判主義に対立するものとして独断論を取上げて以来のことである。元来はセクストス・エンピリコスらギリシアの懐疑論者が,なんらかの説を積極的に提出する哲学者たちをさした呼称に由来している。

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百科事典マイペディア 「独断論」の意味・わかりやすい解説

独断論【どくだんろん】

教条主義

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世界大百科事典(旧版)内の独断論の言及

【懐疑論】より

…人間的認識の主観性と相対性を強調して,人間にとって普遍的な真理を確実にとらえることは不可能だとする思想上の立場。独断論dogmatismに対する。広義にはあらゆる普遍妥当的な真理の認識可能性を否定する立場を指すが,狭義には特定の領域,例えば宗教や道徳において確実な真理に到達する可能性を否定する立場を指すのにも用いられる。…

※「独断論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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