日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉東」の意味・わかりやすい解説
玉東(町)
ぎょくとう
熊本県北部、玉名郡(たまなぐん)にある町。1967年(昭和42)町制施行。北部は三波川(さんばがわ)変成岩からなる低山性の米野(めの)山地、中央部は菊池(きくち)平野、南部は安山岩類の火山岩からなる金峰(きんぽう)山塊などで構成されている。中央部の菊池平野もその東半は肥後(ひご)台地であるため、伝統的な基幹作物は養蚕で、イネ、雑穀類の栽培は補完的地位にあった。しかし、昭和30年代後半に、天水(てんすい)町(現、玉名市)、河内(かわち)町(現、熊本市西区)から伸びてきたミカン栽培は、南部の金峰山北麓(ほくろく)地帯に定着し、現在では、この町の主幹作物。また、近年はスイカ、ナシ、イチゴなどの栽培も盛ん。町央をほぼ東西に国道208号とJR鹿児島本線とが走り、町の中心は木葉(このは)駅前にある。木葉山は全山石灰石の塊で、数多くの中小業者が採掘、生石灰、炭化カルシウム製造などに従事。西南戦争で薩摩(さつま)軍の命運を決めた田原坂(たばるざか)の激戦では、木葉が官軍の最前線基地となったこともあって、高月官軍墓地(西南戦争遺跡、国指定史跡)、仮包帯所跡ほか旧跡も多い。郷土玩具(がんぐ)に木の葉猿がある。面積24.33平方キロメートル、人口5045(2020)。
[山口守人]