玉葛・玉蔓・玉鬘(読み)たまかずら

  • たまかずら ‥かづら

精選版 日本国語大辞典の解説

[1] 〘名〙
① (「たま」は美称。「かずら」はつる性の植物の総称) つたなどつる性の植物の美称。特定の植物をさすという説もあり、ヒカゲノカズラ、ヘクソカズラ、ビナンカズラなどが挙げられるが、確証はない。→(二)(一)。
※万葉(8C後)一四・三五〇七「谷狭(せば)み峯に延(は)ひたる多麻可豆良(タマカヅラ)絶えむの心我がもはなくに」
② 装身具。玉を緒で貫いて作った髪飾り。→(二)(二)。
※書紀(720)雄略一四年四月(前田本訓)「根使主(おむ)の着せる玉縵(たまカツラ)、大(はなは)た貴(けやか)にして最好(いとうるわ)し」
③ 装飾具。詳細は未詳。新羅(しらぎ)の古墳から出土した金または金銅製の冠(かんむり)の類かという。また、②と同じ髪飾りともいう。
※書紀(720)安康元年二月(図書寮本訓)「故丹心(まことのこころ)を呈(あらは)さむとして、私の宝名(な)は押木(おしき)の珠縵(タマかづら)、〈一に云はく立縵といふ、又云はく磐木縵といふ〉を捧げて」
④ (「たま」は美称) 美しいかつら、またはかもじ。
※斎宮女御集(985頃か)「御ぐしのめでたかりしはまたあらむやとて、とりに奉りたまへりければ、からもなくなりにし君がたまかつらかけもやするとおきつつもみむ」
⑤ (「たま」は美称) 女性の美しい髪のたとえにいう。また、美しい女性の意で、遊女などをいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※浮世草子・世間娘容気(1717)一「ありし昔の玉かづら色つくれる面影常にかはり」
⑥ 仏具。「華鬘(けまん)」の別称。
[2]
[一] つる草のかずらの意で使われたもの。
① (つるがどこまでも延びてゆくところから)
(イ) 「長し」「いや遠長く」などにかかる。
※万葉(8C後)三・四四三「玉葛(たまかづら) いや遠長く 祖(おや)の名も 継ぎゆくものと 母父(おもちち)に 妻に子どもに 語らひて」
(ロ) 「絶えず」「絶ゆ」にかかる。
※万葉(8C後)三・三二四「つがの木の いや継ぎ継ぎに 玉葛(たまかづら) 絶ゆることなく ありつつも やまず通はむ」
(ハ) 延びる意の延(は)うの意で、「延ふ」と同音の「這(は)ふ」にかかる。
※古今(905‐914)恋四・七〇九「玉かづらはふ木あまたになりぬれば絶えぬ心のうれしげもなし〈よみ人しらず〉」
(ニ) 細長く延びているものの意から、「筋(すぢ)」にかかる。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「恋ひ渡る身はそれなれど玉かつらいかなるすぢをたづねきつらむ」
② かずらの花・実の意で、「花」「実」にかかる。一説に、「花のみ咲く」「実ならぬ」にかかるともいう。→補注(1)。
※万葉(8C後)二・一〇一「玉葛(たまかづら)実成らぬ木にはちはやぶる神そつくと言ふ成らぬ木ごとに」
③ つる草の一つ、「ひかげのかずら」を「かずら」とも「かげ」ともいうところから、「かげ」と同音、または同音を含む「影」「面影」にかかる。一説に、(二)の「懸(か)く」にかかる用法の転じたものという。→補注(1)。
※万葉(8C後)二・一四九「人はよし思ひやむとも玉蘰(たまかづら)影に見えつつ忘らえぬかも」
④ 「幸(さき)く」にかかる。かかり方未詳。→補注(2)。
※万葉(8C後)一二・三二〇四「玉葛(たまかづら)幸くいまさね山菅の思ひ乱れて恋ひつつ待たむ」
[二] 髪飾りとしての意で用いられ、これを頭にかけるところから、「懸(か)く」にかかる。
※万葉(8C後)一二・二九九四「玉蘰(たまかづら)かけぬ時なく恋ふれども何しか妹に逢ふ時もなき」
[三] 「かづら」と同音を含む地名「かづらき」にかかる。
※後撰(951‐953頃)秋下・三九一「玉かつら葛木山(かづらきやま)のもみぢ葉は面影にのみ見え渡る哉〈紀貫之〉」
[3]
[一] (玉鬘) 「源氏物語」に登場する女性の一人。頭中将と夕顔との間に生まれ、母をなくして筑紫に流浪し、帰京後光源氏に引きとられて六条院にはいり、貴公子たちのあこがれのまととなる。のち、嫌っていた髭黒大将(ひげくろのだいしょう)と意外な結婚をする。思慮も深く、身を処することに賢明であった。
[二] (玉鬘) 「源氏物語」第二二帖の巻名。源氏三四歳の末頃から三五歳の一二月まで。夕顔の遺児玉鬘が、乳母一家とともに筑紫に流浪し、大夫監(たいふのげん)の手をのがれて上京し、初瀬参詣の折に昔の母の侍女右近と会い、源氏の六条院に引きとられるまでがつづられる。玉鬘の二〇歳から二一歳まで。
[三] (玉葛) 謡曲。四番目物。各流(観世流は「玉鬘」)。金春禅竹作。旅僧が初瀬(はせ)もうでに出かけ初瀬川に至ると、女が小舟でこぎのぼってきて、僧と同行する。長谷寺参詣の夜語りに、昔、玉葛の内侍(ないし)が筑紫からここに逃げて来たことを語り、自分がその化身であるとほのめかして消える。僧が回向(えこう)すると、夜、夢の中に玉葛の霊が現われて、昔をざんげし妄執を晴らす。「源氏物語」による。
[補注](1)(二)(一)の②③は、枕詞でないとする説もある。
(2)(二)(一)④のかかり方は「かづら」が呪物としても用いられるところから、栄えるの意でかかるとする説もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

オーバーシュート

感染症の爆発的な感染拡大を指す。語源は、「(目標を)通り越す」「(飛行機などが停止位置を)行き過ぎる」という意味の英語の動詞「overshoot」。2019年12月に発生した新型コロナウイルスに関して...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android