デジタル大辞泉
「玉葛」の意味・読み・例文・類語
たま‐かずら〔‐かづら〕【玉▽葛/玉×蔓】
[名]つる草の美称。
「―はふ木あまたになりぬれば絶えぬ心のうれしげもなし」〈伊勢・一一八〉
[枕]つるがのび広がるところから、「長し」「延ふ」「繰る」「絶えず」などにかかる。
「―延へてしあらば年に来ずとも」〈万・三〇六七〉
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たま‐かずら‥かづら【玉葛・玉蔓・玉鬘】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① ( 「たま」は美称。「かずら」はつる性の植物の総称 ) つたなどつる性の植物の美称。特定の植物をさすという説もあり、ヒカゲノカズラ、ヘクソカズラ、ビナンカズラなどが挙げられるが、確証はない。→[ 二 ][ 一 ]。
- [初出の実例]「谷狭(せば)み峯に延(は)ひたる多麻可豆良(タマカヅラ)絶えむの心我がもはなくに」(出典:万葉集(8C後)一四・三五〇七)
- ② 装身具。玉を緒で貫いて作った髪飾り。→[ 二 ][ 二 ]。
- [初出の実例]「根使主(おむ)の着せる玉縵(たまカツラ)、大(はなは)た貴(けやか)にして最好(いとうるわ)し」(出典:日本書紀(720)雄略一四年四月(前田本訓))
- ③ 装飾具。詳細は未詳。新羅(しらぎ)の古墳から出土した金または金銅製の冠(かんむり)の類かという。また、②と同じ髪飾りともいう。
- [初出の実例]「故丹心(まことのこころ)を呈(あらは)さむとして、私の宝名(な)は押木(おしき)の珠縵(タマかづら)、〈一に云はく立縵といふ、又云はく磐木縵といふ〉を捧げて」(出典:日本書紀(720)安康元年二月(図書寮本訓))
- ④ ( 「たま」は美称 ) 美しいかつら、またはかもじ。
- [初出の実例]「御ぐしのめでたかりしはまたあらむやとて、とりに奉りたまへりければ、からもなくなりにし君がたまかつらかけもやするとおきつつもみむ」(出典:斎宮女御集(985頃か))
- ⑤ ( 「たま」は美称 ) 女性の美しい髪のたとえにいう。また、美しい女性の意で、遊女などをいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- [初出の実例]「ありし昔の玉かづら色つくれる面影常にかはり」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)一)
- ⑥ 仏具。「華鬘(けまん)」の別称。
- [ 2 ] 枕
- [ 一 ] つる草のかずらの意で使われたもの。
- ① ( つるがどこまでも延びてゆくところから )
- (イ) 「長し」「いや遠長く」などにかかる。
- [初出の実例]「玉葛(たまかづら) いや遠長く 祖(おや)の名も 継ぎゆくものと 母父(おもちち)に 妻に子どもに 語らひて」(出典:万葉集(8C後)三・四四三)
- (ロ) 「絶えず」「絶ゆ」にかかる。
- [初出の実例]「つがの木の いや継ぎ継ぎに 玉葛(たまかづら) 絶ゆることなく ありつつも やまず通はむ」(出典:万葉集(8C後)三・三二四)
- (ハ) 延びる意の延(は)うの意で、「延ふ」と同音の「這(は)ふ」にかかる。
- [初出の実例]「玉かづらはふ木あまたになりぬれば絶えぬ心のうれしげもなし〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)恋四・七〇九)
- (ニ) 細長く延びているものの意から、「筋(すぢ)」にかかる。
- [初出の実例]「恋ひ渡る身はそれなれど玉かつらいかなるすぢをたづねきつらむ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)玉鬘)
- ② かずらの花・実の意で、「花」「実」にかかる。一説に、「花のみ咲く」「実ならぬ」にかかるともいう。→補注( 1 )。
- [初出の実例]「玉葛(たまかづら)実成らぬ木にはちはやぶる神そつくと言ふ成らぬ木ごとに」(出典:万葉集(8C後)二・一〇一)
- ③ つる草の一つ、「ひかげのかずら」を「かずら」とも「かげ」ともいうところから、「かげ」と同音、または同音を含む「影」「面影」にかかる。一説に、[ 二 ]の「懸(か)く」にかかる用法の転じたものという。→補注( 1 )。
- [初出の実例]「人はよし思ひやむとも玉蘰(たまかづら)影に見えつつ忘らえぬかも」(出典:万葉集(8C後)二・一四九)
- ④ 「幸(さき)く」にかかる。かかり方未詳。→補注( 2 )。
- [初出の実例]「玉葛(たまかづら)幸くいまさね山菅の思ひ乱れて恋ひつつ待たむ」(出典:万葉集(8C後)一二・三二〇四)
- [ 二 ] 髪飾りとしての意で用いられ、これを頭にかけるところから、「懸(か)く」にかかる。
- [初出の実例]「玉蘰(たまかづら)かけぬ時なく恋ふれども何しか妹に逢ふ時もなき」(出典:万葉集(8C後)一二・二九九四)
- [ 三 ] 「かづら」と同音を含む地名「かづらき」にかかる。
- [初出の実例]「玉かつら葛木山(かづらきやま)のもみぢ葉は面影にのみ見え渡る哉〈紀貫之〉」(出典:後撰和歌集(951‐953頃)秋下・三九一)
- [ 3 ]
- [ 一 ] ( 玉鬘 ) 「源氏物語」に登場する女性の一人。頭中将と夕顔との間に生まれ、母をなくして筑紫に流浪し、帰京後光源氏に引きとられて六条院にはいり、貴公子たちのあこがれのまととなる。のち、嫌っていた髭黒大将(ひげくろのだいしょう)と意外な結婚をする。思慮も深く、身を処することに賢明であった。
- [ 二 ] ( 玉鬘 ) 「源氏物語」第二二帖の巻名。源氏三四歳の末頃から三五歳の一二月まで。夕顔の遺児玉鬘が、乳母一家とともに筑紫に流浪し、大夫監(たいふのげん)の手をのがれて上京し、初瀬参詣の折に昔の母の侍女右近と会い、源氏の六条院に引きとられるまでがつづられる。玉鬘の二〇歳から二一歳まで。
- [ 三 ] ( 玉葛 ) 謡曲。四番目物。各流(観世流は「玉鬘」)。金春禅竹作。旅僧が初瀬(はせ)もうでに出かけ初瀬川に至ると、女が小舟でこぎのぼってきて、僧と同行する。長谷寺参詣の夜語りに、昔、玉葛の内侍(ないし)が筑紫からここに逃げて来たことを語り、自分がその化身であるとほのめかして消える。僧が回向(えこう)すると、夜、夢の中に玉葛の霊が現われて、昔をざんげし妄執を晴らす。「源氏物語」による。
玉葛の補助注記
( 1 )[ 二 ][ 一 ]の②③は、枕詞でないとする説もある。
( 2 )[ 二 ][ 一 ]④のかかり方は「かづら」が呪物としても用いられるところから、栄えるの意でかかるとする説もある。
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玉葛 (たまかずら)
能の曲名。観世流は《玉鬘》と書く。四番目物。金春禅竹(こんぱるぜんちく)作。シテは玉葛の霊。旅の僧が初瀬に赴くと,川舟を操って来る女性(前ジテ)がいて,僧とともに長谷(はせ)寺に参り,有名な二本杉(ふたもとのすぎ)に案内する。女は僧に《源氏物語》の玉葛の話をして聞かせる。幼い玉葛は,母の夕顔の死後九州に下って乳母に育てられたが,成人後九州を脱出し,この二本杉で母の侍女の右近に出会い,右近が当時仕えていた光源氏に引き取られたと話して弔いを頼むが(〈クセ〉),やがて自分こそその玉葛の霊だとほのめかして消え失せる。僧が弔いをすると,玉葛の霊(後ジテ)が髪を乱した姿で現れ,男たちとの間の恋の迷いのせいか,死後の今も妄執の苦しみから抜け出せない身なのだと打ち明ける(〈カケリ・中ノリ地〉)。
《源氏物語》を典拠とするが,能としての主題が明確でなく,玉葛の妄執の原因がはっきりとは示されていない。金春禅竹作と断定できる能は少ないが,禅竹はことさらにあいまいな形で感覚的に訴えかけるという傾向があるように思われる。
執筆者:横道 万里雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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玉葛
たまかずら
能の曲目。四番目物。五流現行曲。観世(かんぜ)流は「玉鬘」と表記。金春禅竹(こんぱるぜんちく)作。典拠は『源氏物語』の「玉葛」の巻。長谷(はせ)観音に参詣(さんけい)した僧(ワキ)を、舟を漕(こ)ぐ女(前シテ)が二本(ふたもと)杉に案内し、数奇な運命にもてあそばれた玉葛が、亡き母夕顔の侍女とここで巡り会ったことを語り、その亡霊であることをほのめかして消える。僧の弔いに、玉葛の霊(後シテ)が現れ、妄執に悩むさまを訴え、昔を懺悔(ざんげ)するが、やがて成仏して消える。狂女物として扱われるが、主題が明確でない。若い女性の物思わしさとか、異性への恐怖を、情緒的に造形した能である。
[増田正造]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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