玉藻(読み)たまも

精選版 日本国語大辞典 「玉藻」の意味・読み・例文・類語

たま‐も【玉藻】

〘名〙 (「たま」は美称) 美しい藻。→玉藻刈(かる)
万葉(8C後)一四・三三九七「常陸なる浪逆の海の多麻毛(タマモ)こそ引けば絶えすれ何どか絶えせむ」
源氏(1001‐14頃)真木柱「たまもはな刈りそとうたひすさび給ふも」

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デジタル大辞泉 「玉藻」の意味・読み・例文・類語

たま‐も【玉藻】

藻の美称。
荒磯ありそにそ―はふる」〈・一三五〉

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改訂新版 世界大百科事典 「玉藻」の意味・わかりやすい解説

玉藻 (たまも)

中世の小説。《玉藻の前》《玉藻の草子》《玉藻の前物語》とも呼ばれる。著者,成立年不詳。謡曲殺生石(せつしようせき)》などと同様,美女に化して院の命をねらった狐の伝説を題材としている。昔,鳥羽院御所に玉藻の前という,天下に並びない美女がいた。何事にも精通し,院の寵愛も深かったが,院はやがて病気となった。それを陰陽頭(おんみようのかみ)安倍泰成(あべのやすなり)に占わせると,玉藻の前は,実は下野国那須野にすむ,齢八百,尾の二つある大狐で,院の病はそのせいであると言う。泰成に祈禱をさせると,玉藻の前は消え失せ,院の病は快方に向かった。三浦介(みうらのすけ),上総介(かずさのすけ)に那須野に逃げ戻った狐の追討が命じられ,両人は苦労の末に狐を射止めるという内容。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉藻」の意味・わかりやすい解説

玉藻
たまも

水中に生える藻の古称で、特定の藻種をさす語ではない。「玉」は美称。『万葉集』に詠まれている「今日(けふ)もかも沖つ玉藻は白波の八重(やえ)折るが上(え)に乱れてあるらむ」(巻7)や「水底(みなそこ)に生(お)ふる玉藻の生ひ出(い)でずよしこのころはかくて通はむ」(巻11)などの玉藻はホンダワラをさすと考えられる。ホンダワラ類の体枝上にはたくさんの小形うきぶくろがあり、これによって玉藻の語が生まれたとも解されるが、なかには淡水域の水草と解される場合もあり、語の由来ははっきりしない。たとえば「勝鹿(かつしか)の真間(まま)の入江うちなびく玉藻刈りけむ手児名(てこな)し思ほゆ」(巻3)の玉藻は、海草のアマモか汽水草のイトモ、エビモなどをさすと考えられる。

 なお、タマモと片仮名表記する場合は淡水産緑藻植物のChaetophora elegans Agandhをさす。これは冷たい水域に産し、鮮緑色、寒天質の小塊状体となる。大きさは1センチメートル以内と小さいため、注意しないとみつけにくい。

[新崎盛敏]

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普及版 字通 「玉藻」の読み・字形・画数・意味

【玉藻】ぎよくそう

冕の飾り。

字通「玉」の項目を見る

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動植物名よみかた辞典 普及版 「玉藻」の解説

玉藻 (タマモ)

植物。藻の美称

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