島木健作の長編小説。正編は1937年(昭和12)、続編は翌年、河出書房刊。病気のため東京の学生生活から故郷に帰った杉野駿介(しゅんすけ)は、回復後も直接生産に生きる新しい生活にとどまり、村人たちとの溝を埋めながらタバコ栽培の増段運動にも成功する(正編)。初め駿介を敬遠していた村人たちもしだいに周辺に集まるようになる。共働者であった父の死にあい、己の「根本的なプログラム」をたてるために上京するが、やはり都会の空気に失望し、ふたたび帰って村の生活に定着する(続編)。主人公は社会主義者であったことはなく、したがって転向問題を正面から取り上げた作品ではないが、帰農による労働生活への求道的な志向には、前作『再建』発禁後の作者の再起の位相が示されるとともに、日中戦争開始後の青年、知識人に広く迎えられた。
[高橋春雄]
『『日本文学全集45 武田麟太郎・島木健作集』(1974・集英社)』▽『『島木健作全集5・6』(1976・国書刊行会)』▽『『島木健作』(『中村光夫作家論集3』所収・1968・講談社)』
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…32年仮釈放ののち,34年獄中体験に基づいた《癩》を発表して注目され,続く《盲目》等により新進作家としての地歩を固めた。37年日中戦争の開始(蘆溝橋事件)をはさんで前後に《再建》《生活の探求》を刊行。前者は発禁となるが,後者の求道的な帰農への志向は当時の青年知識層に広く迎えられた。…
※「生活の探求」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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