デジタル大辞泉
「生物季節観測」の意味・読み・例文・類語
せいぶつきせつ‐かんそく〔‐クワンソク〕【生物季節観測】
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生物季節観測
気象庁が季節や気候の変化の把握を目的に実施している。対象は桜の開花・満開、梅の開花、アジサイの開花、イチョウの黄葉・落葉、カエデの紅葉・落葉、ススキの開花の6種目計9現象。以前はウグイスやミンミンゼミの初鳴き、トノサマガエルの初見といった動物も観測していたが、都市化が進み見つけにくくなったことなどから2020年を最後に廃止した。
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生物季節観測
せいぶつきせつかんそく
気象庁の気象台や測候所が、生物季節現象(植物の開花や紅葉、動物の初見や初鳴など)を目で見たり耳で聞いて確認した日を記録する観測。返り咲きなど本来の季節とは異なる時期に起きる不時現象(ふじげんしょう)も観測する。春や夏に気温が高いと植物の発芽や開花は早くなる。また秋の紅葉や落葉は気温が高いとその時期が遅くなる。このように生物は気象の影響を受けるが、その程度を知るとともに、季節の進み具合の遅速や天候の特徴、気候の変化などを生物季節観測から知ることができる。
[青木 孝]
世界中で、古くから生物季節観測に相当する自然観察は行われており、種まきをはじめとする農作業の予定などに利用するための農事暦や、動植物の季節の移り変わりを記した自然歴がつくられてきた。現在では、各国の気象機関などで組織的な生物季節観測ネットワークが運営されている。日本では、1880年(明治13)の気象観測法のなかに生物季節観測についての記述があるので、すでにその時点で生物季節観測が当時の東京気象台(現、気象庁)で実施されていたと考えられる。1953年(昭和28)には「生物季節観測指針」が制定され、観測方法などの統一的な基準が示された。天皇や将軍らが開いた観桜会の日の記録は平安時代までさかのぼることができるなど、生物季節観測は気候変動および気候変動が生態系に及ぼす影響を評価するための重要な資料としても、研究に役立てられている。
[青木 孝]
現在の生物季節観測では、開花を観測する植物には、たとえばウメ、ツバキ、タンポポ、ヤマツツジ、ノダフジ、ヤマハギ、アジサイ、サルスベリ、ススキなどがある。サクラは開花と満開を観測する。イチョウは発芽と黄葉と落葉を、カエデは紅葉と落葉を、それぞれ観測している。動物の初見を観測する対象にはツバメ、モンシロチョウ、キアゲハ、トノサマガエル、シオカラトンボ、ホタルなどがあり、初鳴はヒバリ、ウグイス、アブラゼミ、ヒグラシ、モズなどについて観測する。生物季節観測に関連して、サクラの開花予想が気象庁から発表されてきたが、2010年(平成22)から廃止された。その背景には、民間気象事業者がインターネットなどを通して一般の人々から開花に関する情報を集め、サクラの開花予想に関して、より詳細な情報を提供するようになったことがある。サクラの開花日の新平年値(2010年までの30年間の平均)は、従来の平年値(2000年までの30年間の平均値)に比べて全国的に1~3日早くなっており、都市化や地球温暖化が進行していることが、生物季節観測でも明らかになった。また、東京や名古屋、大阪などでは、都市化の影響で数が減少したホタルやトノサマガエルの生物季節観測が、2011年から行われなくなった。しかし、民間気象事業者や気象友の会、環境省などが、インターネットなどにより身近な動植物の観察結果に関する情報を会員から収集して提供するシステムを構築しており、幅広く生物季節観測が行われるようになっている。
[青木 孝]
『国立天文台編『理科年表』各年版(丸善)』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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