産まれた土地の守り神をウブスナ神という。ウジガミといっている氏の守り神と、多くの場合混同していることが多く、双方とも守護を受ける側の人を氏子とよんでいて、こんなところが混同の源かもしれない。生児の誕生後32~33日目に行われる宮参りには、産土神に詣(もう)でるという風習があり、この場合土地の守護神に参詣(さんけい)するのであるが、その対象とする神を産土様とよぶのが普通である。もう一つよくいっしょにされるウブガミ(産神)というのがあって、産土と紛れやすい。しかし産神のほうは出産の守護神で、赤不浄(あかふじょう)とよぶ血の穢(けがれ)には関係なく、むしろ産室に勧請(かんじょう)して祀(まつ)っているのに対し、産土神は血の穢を忌み、生児の宮参りのときも母親は忌みの期間にあるということで、姑(しゅうとめ)とか仲人親(なこうどおや)、または産婆などが生児を抱いて参詣する。場所によっては、生児もヒガカリ(忌みの期間)だといって鳥居より中に入ることができず、鳥居の外で参詣を済ませる。これをトリイマイリといっている。そしてこのあと母の忌みの明ける75日を待って、母子ともども宮参りをするという。ウブスナは産神とは異なった性格の神であることが、これでもわかる。ウブスナは鎮守という別称もあって「村の鎮守の神様の……」と小学唱歌にも歌われている。土地とか村とかいう地域的な守護神であって、氏神のように個々の家庭や家族にまで深くかかわってくるような神ではないようである。現在の鎮守の祭神には、諏訪(すわ)(長野県)、八幡(はちまん)(京都)、熊野(和歌山県)など、国内の大きな神社の祭神を勧請してきて祀っているものが多く、遠く離れた土地の神を祀っているということは、ウブスナの感じとは印象が異なるようであるが、地域に氏を異にした住人が多くなり、単純な組織も崩れてしまって従来の祭神では飽き足りないものができたためであろう。また外部的には御師(おし)などの神人の活躍もあったであろうが、原点は住民の信仰意識の変化であろう。
[丸山久子]
…生まれた土地の守護神。産土の神または単に産土ともいう。産土とは人の出生地の意味で,先祖伝来もしくは自分の生地を出自意識をもって表現する言葉であり,したがってその土地の鎮守社またはその祭神を自分の出自との関係で生まれながらの守護神と信じて,これを産土の神,産土神と称する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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