日本大百科全書(ニッポニカ) 「田子倉ダム」の意味・わかりやすい解説
田子倉ダム
たごくらだむ
福島県西部、只見川(ただみがわ)上流につくられたダム。南会津(あいづ)郡只見町にある。堤高145メートル、長さ462メートル、有効貯水量は3億7000万立方メートルあり、猪苗代(いなわしろ)湖の3億3000万立方メートルよりも多い。湛水(たんすい)面積は9.9平方キロメートル。第二次世界大戦後、国土総合開発法に基づく特定地域開発事業の一環として只見川水系総合開発事業が行われ、そのなかの最重点事業の一つがこのダムと発電所の建設であった。電源開発会社が工事を担当し、1953年(昭和28)ダムの建設に着工し、1961年に完成した。発電所の建設も並行して進められ、1959年に一部発電を始め、1961年には完成して38万キロワットの出力をみた。電力は東京、東北の両電力会社に販売。建設当時は資材輸送の鉄道や道路もなく、国鉄(現、JR)が会津線(現、只見線)の会津宮下―会津川口間を開通し、電源開発会社がそれを田子倉まで延長して工事専用線とした。また約50戸の水没家屋の移転補償問題も難航し、最終的に合意が成立したのは1956年である。周囲は静かな山村に戻り、ダムや田子倉湖は越後(えちご)三山只見国定公園の一部として貴重な観光資源となっている。工事専用線もJR只見線として新潟県魚沼(うおぬま)市まで通じ、上越線と接続している。
[渡辺四郎]