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男子不妊症 だんしふにんしょう Male Infertility

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家庭医学館の解説

だんしふにんしょう【男子不妊症 Male Infertility】

◎男性の場合は精子(せいし)が問題
[どんな病気か]
 男性側になんらかの原因があるために子どもに恵まれない場合を、男子不妊症といいます。正常な結婚生活を営みながら子どもに恵まれない夫婦のうち、おおよそ3分の1は男性に原因が、3分の1は女性に原因があると考えられています。残りのおおよそ3分の1は夫婦双方に原因がある、または原因がはっきりわからないといわれています。
 男子不妊症では精液中にまったく精子がいないか(無精子症(むせいししょう))、いても数が少ない(乏精子症(ぼうせいししょう))、十分な数がいても精子に正常な活動能力がない(精子無力症(せいしむりょくしょう))などの状態にあります。
[原因]
 男子不妊症の原因は、つぎの3つに分けられます。
 ①精巣(せいそう)(睾丸(こうがん))を刺激して活動させる機能の障害、つまり脳にある脳下垂体前葉(のうかすいたいぜんよう)、視床下部(ししょうかぶ)などの障害、②精巣そのものの障害、③精子がその通路を通れない障害、つまり精巣上体(せいそうじょうたい)(副睾丸(ふくこうがん))、精管(せいかん)、精嚢(せいのう)、前立腺(ぜんりつせん)などでの精子の通過障害です。
[検査と診断]
 まず精液の検査をし、精子に問題があるかどうかを調べます。3~5日禁欲したあと精液を採取し、30分ないし1時間の間に検査を行ないます。
 精液の量が2mℓ以上、精子の数が1mℓ中に2000万個以上、精子の運動率(全精子中の活動的な精子の割合)60%以上が、世界保健機関(WHO)が定めた正常な精液の基準です。ただし、これは絶対的なものではなく、あくまで目安であり、基準以下でも妊娠が得られる場合もあります。
 また、精液の検査値はばらつきが大きいため、1回だけの検査では不十分で、3~4回検査を行なって、その平均値を基準とします。
 精液の検査で異常と判定された場合は、本格的な検査に入ります。
 過去の精巣の外傷や腫(は)れ、耳下腺炎(じかせんえん)(「耳下腺炎」)や高熱の出る病気にかかった経験の有無のほか、停留精巣(ていりゅうせいそう)(停留睾丸(ていりゅうこうがん)(「停留精巣(停留睾丸)」))、鼠径(そけい)ヘルニア(「鼠径ヘルニア(脱腸)」)などで手術をしたかどうかが聞かれます。
 また、精巣およびその関連器官の診察も重要となります。精巣の大きさや張り、精巣上体(副睾丸)や精管の状態、精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)(「精索静脈瘤」)の有無、前立腺、精嚢の炎症の有無などを調べます。
 さらに、血液検査で精巣関係のホルモン値、とくに脳下垂体から出る性腺刺激(せいせんしげき)ホルモン(LH、FSH)の量を調べることは重要です。
 精索静脈瘤がある場合は、体表の温度を図で示すサーモグラフィーで陰嚢表面の温度を調べ、静脈瘤のあるほう(多くは左側だけにある)の温度上昇の程度を調べます。
 ここまでの検査は痛みや苦痛をともなわない簡単なものです。熟練した専門医であれば、この時点で原因をはっきりつかむことは困難でも、どこがどの程度に障害を受けているかの推定はできます。
 障害されている部位や程度を確認する検査として、精巣の生検(せいけん)や精管・精嚢造影があります。精巣の生検は、陰嚢を約1cm切開(せっかい)して精巣の一部(マッチの頭くらいの量)をとり、精巣で精子がつくられる状態を調べるものです。精管・精嚢造影は1~2cm切開して造影剤を注入し、精管や精嚢を精子が通過できるかX線撮影でみるものです。どれも外来で局所麻酔で行なうこともできますが、痛みが強い場合もあり、入院して腰椎(ようつい)麻酔で行なうこともあります。
[治療]
 原因が明らかになれば、それに応じた治療が行なわれますが、治療法がない場合もあります。
 また、残念ながら原因がわからない場合が多く、こうした人の治療も困難といわざるを得ません。
●外科的治療法
 外科的治療の対象となるのは、精路通過障害(ふつうは無精子症です)、精索静脈瘤、停留精巣などがあります。
 精路通過障害の原因としては、生まれつきの障害、外傷、鼠径ヘルニアなどによる手術、細菌感染、パイプカット手術などがあります。顕微鏡を使って精路となる器官を細かくつなぎ直し、精子が通れるようにする手術を主体に行ないますが、障害の部位と程度などによって治療成績は大きく異なります。たとえば、パイプカット手術の後の離婚、再婚のケースが増えていますが、この場合の再吻合(さいふんごう)(つなぎ直し)は比較的に容易です。しかし、広範囲に障害や欠損があると治療は困難です。
 精索静脈瘤による精巣障害も、比較的に治療の効果があがります。ふつう左側の陰嚢におこる病気で、静脈弁が欠けていたりして血の流れが悪くなり、精巣のまわりの静脈がみみず腫れのように膨(ふく)らんで精巣の温度を上昇させ、精巣機能を障害します。下腹部や鼠径部に小切開を加えて、逆流する静脈を切断すれば治ります。手術用の内視鏡(腹腔鏡(ふくくうきょう))での手術も可能です。
●内科的治療法
 薬物治療で割合に効果があるものに、ホルモン療法と感染症治療があります。
 ホルモン治療は性腺刺激ホルモンが多少不足している人が対象で、不足しているホルモンを注射で補うとめざましい効果が得られることがあります。
 また、前立腺や精嚢に細菌による炎症をもっている人には、抗生物質を投与すると、やはりいちじるしい効果があることがあります。しかし、こうした例は多くありません。
 男子不妊症の大部分は原因不明で、特発性乏精子症(とくはつせいぼうせいししょう)といわれるものです。
 こうした場合はビタミン剤、代謝賦活剤(たいしゃふかつざい)、漢方薬などが用いられますが、治療効果はあまりみられません。残念ではありますが、厚労省から正式に認可された薬剤はいまだありません。
●人工授精(じんこうじゅせい)
 自然に妊娠が得られない場合、人工授精が選択されることもあります。
 一口に人工授精といっても、配偶者間(はいぐうしゃかん)人工授精(AIH)、非配偶者間人工授精(AID)、体外受精(たいがいじゅせい)・胚移植(はいいしょく)(IVF‐ET)、配偶子卵管内移植(はいぐうしらんかんないいしょく)(GIFT(ギフト))、卵子内精子注入(ICSC)など、さまざまな技術が開発されています。
 AIH以外は保険の適用がされないほか、倫理的、法律的な問題がおこる可能性があり、慎重に考えるべきです。

出典|小学館
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

男子不妊症
だんしふにんしょう

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出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
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